米国被害者遺族、エミリー・ターセルの闘い~HPVワクチン薬害九州訴訟第13回期日より

 2019年10月16日、福岡地方裁判所で、HPVワクチン薬害九州訴訟第13回口頭弁論期日が開かれました。

 開廷前には、秋晴れの空の下、裁判所正門前において門前集会を行いました。

 遠路傍聴にお越し下さった、大分HIV訴訟を支える会/大分ともに歩む会の山崎兼雄さんからは、大分でもHPVワクチン被害者を支える会を立ち上げて、この訴訟を支援していきたいとの心強いメッセージをいただきました。

 大阪弁護団の小山優子弁護士は、アメリカ視察によって世界にも多くの被害者がいるが声をあげられない人が多いことがわかった、私たちの頑張りで世界の被害者も救われるので頑張っていきましょうと挨拶しました。

 また、薬害肝炎訴訟の原告の方からは、自分たちも周囲から支えられて今日がある、支援をこれからも頑張るぞ!との力強い言葉をいただきました。

 法廷では、まず、九州弁護団の小出真実弁護士より、米国のHPVワクチン薬害の被害者遺族である、エミリー・ターセルの陳述書の内容を口頭で説明しました。

  2008年6月、米国メリーランド州在住の女子大学生であったクリスティーナ・ターセルは、ガーダシルの接種後から不整脈を生じるようになり、3回目の接種を受けた18日後に21歳で死亡しました。
 クリスティーナは、高校・大学を通じて成績優秀で、大学ではスタジオアートを専攻し、野球やテニスなどをプレーする活発な女性でした。ワクチン接種前は健康に問題はなく、運動競技に参加する際の検査でも心機能の異常を指摘されたこともありませんでした。

 しかし2007年11月に2回目のガーダシルの接種を受けた後に心電図検査で異常が指摘され、関節痛も訴えるようになりました。

 そして2008年6月の3回目の接種の後は強い疲労感や、めまい、立ちくらみといった症状を訴えるようになり、18日後にはベッドで死亡した状態で発見されました。

 こうしたクリスティーナの死に関する経緯は、米国内において昨年9月に出版された『The HPV Vaccine on Trial』という書籍においても、詳しく紹介されています。

 クリスティーナの母であるエミリーは、米国のワクチン健康被害補償プログラム制度(VICP)の下で米国保健福祉省を相手とした補償請求を連邦請求裁判所に提起しました。その後8年にわたる審理を経て、昨年8月には裁判所が死因はガーダシルの副反応であることを認定し、その判断が確定しました。訴訟の過程では著名な免疫学者や循環器内科医らが、ガーダシルと致死性不整脈との関係を医学的に説明しています。

 エミリーはVAERSという副作用報告システムに対してクリスティーナの死を報告しましたが、食品医薬品局(FDA)や保健福祉省の疾病予防管理センター(CDC)は十分な調査を行おうとしませんでした。

 また、ガーダシルの製造販売を行ったメルク社は、クリスティーナの死因はウイルス感染によるものであるとVAERSに報告していましたが、エミリーが調査したところ、病院関係者からは、ウイルス感染が死因だとメルク社に説明したことはないという回答が戻るなど、死因がウイルス感染とされた経緯は全く不明のままでした。しかしその後もメルク社は報告内容を訂正していません。

 弁護団からは、こうした経緯を報告したエミリーの陳述書に基づき、VAERSに集積された情報が不正確なものであることを説明し、VAERSに集められた情報には信頼性が欠けており、これらを根拠とする被告らの反論は信用に足らないものであることを指摘しました。

 続いて九州弁護団の佐川民弁護士が、緊急促進事業を開始した当時、被告国がHPVワクチンの危険性を十分認識していたことについて説明を行いました。

 実は、緊急促進事業によってHPVワクチンの接種が積極的に勧められる前の時点で、すでに海外の主要なメディアにおいては、このワクチンの安全性に対する様々な疑問が報じられていました。とりわけアメリカでは、上記のクリスティーナの死亡例をはじめとする多数の重篤な副反応症例が報告されたことによって、先行して社会問題化していたのです。

 

 さらに日本国内でも、サーバリックスの市販開始直後の半年間の調査で、30例のHPVワクチン接種後の重篤な副反応症例が発生したことが判明していました。

GSK社作成「サーバリックス市販直後調査最終報告」p.1より抜粋。市販直後の半年で30例の重篤例が発症していました。
GSK社作成「サーバリックス市販直後調査最終報告」p.1より抜粋。市販直後の半年で30例の重篤例が発症していました。

 これは接種100万人あたりでは約272人という頻度であり、他のワクチンに比べて桁違いの値です。

同報告書p.3より(同報告書に記載された副反応種類別件数一覧の一部です)
同報告書p.3より(同報告書に記載された副反応種類別件数一覧の一部です)

 また、症状からの回復を確認できない副反応症例が一定数存在していることも報告されており、被接種者の訴える症状が一過性の副反応に過ぎないと説明できる状況にはないことも明らかとなっていました。

 このように、サーバリックス市販開始後の日本国内の情報だけでもHPVワクチンの危険性は明白であったのに、こうした内外の情報を無視して緊急接種促進事業を進め、さらには定期接種に組み込んでいった被告国が、被告GSK・被告MSDとともに重篤な副反応被害について責任を負うべきであることは明らかです。

 期日終了後に弁護士会館内で開催した報告集会では、多数の支援の方から、原告とその家族に向けた、暖かく、そして力強い励ましの言葉をいただきました。

 こうした応援の声に応えるように、参加した原告らも、自身の被害状況や法廷の様子についての感想などを、自分の言葉で語りました。

 ある原告は、この日の被告MSDの意見陳述に対する感想として、自分を一生懸命治療をしてくれている先生のことを悪く言われるのが本当につらかったと、時折涙で言葉を詰まらせながら、その悔しさを来場者に語りました。

 その姿に対し、薬害スモンの原告である草場佳枝さんは、自分たちも裁判では人格を否定されることを言われ続けつらかったが、それでも毎回裁判に出ていって頑張れたのは支援して下さる方がいたからだ、一緒に頑張って行きましょうと、あたたかく励まして下さいました。

 集会の最後には、九州原告1番の母である梅本邦子(九州原告団代表)から、今年11月17日の午後1時30分から、北九州市内で、勉強会「知っていますか?子宮頸がんワクチン薬害を~被害者とその家族から聞く~」を開催することをご案内しました。会場は、ウェルとばた8階81会議室(北九州市戸畑区汐井町1-6)です。詳細をこちらからご覧いただき、是非ご参加下さい。

 HPVワクチン薬害九州訴訟の次回の口頭弁論期日は、2020年1月20日(月)午後2時からです。

 是非傍聴におこしください。