2018年12月12日、空は晴れていましたが、木枯らしが吹く冬らしい寒い日となりました。気候の影響もあって症状が悪化して参加できない原告さんもいる中、福岡地方裁判所101号法廷において、第10回口頭弁論期日が開かれました。
今回は、裁判に先立って原告団総会を開催し、議事終了後は引き続き九州訴訟を支える会との交流会を行いました。
会場には50名近くが集まり、各テーブル毎に自己紹介を交えながら意見交換を行って交流を深めることができました。参加された大勢の支援者の方からは、これから法廷に臨む原告さんに対する熱い応援のメッセージをいただきました。
ある原告さんのご家族からは、昨夜から本人は突き上げられるような激痛のために横になって眠ることもできない状態であったため、結局この日の期日に参加することができなかったことが報告されました。すると、他の原告さんからも同様の症状に苦しんだ体験があるとの発言があり、あらためて相互の症状の共通性を認識することができました。
午後1時過ぎには裁判所前に移動し、門前集会を行いました。
全国から支援者が駆けつけ、それぞれから熱いメッセージを来場者に届けて下さいました。
支える会を沖縄で準備しているライターのわたなべゆうこさん。新日本婦人の会福岡県本部から松尾律子さん。スモン薬害訴訟原告の草場さん。薬害C型肝炎訴訟九州原告団共同代表の小林邦丘さん。HIV薬害訴訟を支える会大分の山崎さん。薬害オンブズパーソンタイアップ福岡・薬剤師の猿渡圭一郎さん。フレンズ九州の大学生みよしさん。
それぞれからいただいたメッセージは原告団と弁護団にとって大きな心の支えとなりました。本当にありがとうございました。
午後2時から始まった法廷では、原告10番さんが意見陳述を行いました。
10番さんは、中高一貫の進学校に入学し、医師になるという夢の実現を目指していましたが、中学1年のときにHPVワクチンを2度接種した後、授業中に記号の意味が理解できず、計算ができなくなり、ケアレスミスが増えるようになりました。
症状がワクチンのせいだとは気がつかずに3回目も接種したところ、全身各部の痛みや両上下肢のしびれ、脱力といった症状が出現し、次第に悪化していきました。
欠席や保健室登校も増える中、なんとか成績をキープしようと努力を尽くしましたが、高校に入ったころには、学校に提出する書類に自分の名前を書こうとしても思い出すことができず、自分のノートに書かれた名前を見て転記したものの、これが自分の名前であることを実感できないといった状態となりました。
日付や曜日も理解できず、授業を聞いていても突然今何の授業をしているのかわからなくなるといった症状にも苦しみました。
手足の不随意運動が出るため、両親が手足を押さえても止まることがないといった症状も出現するようになり、学校で痙攣発作を起こして救急車で搬送されることもありましたが、医師からも「絶対演技でしょ」と詐病扱いされ、教師からも「あんたの嘘は見抜いているよ」と言われてしまいました。
10番さんの母は、バリアフリーではない校内の移動に付き添うために仕事を退職しましたが、学校からは、万一介助中に事故があっても母が全責任を負うと約束するよう求められました。10番さんは、もう学校にいてはいけないんだと感じるようになり、多くの友達は泣きながら止めてくれたそうですが退学せざるを得ませんでした。
10番さんはこうしたつらい日々でも気丈に振る舞ってきたつもりでしたが、退学後は、自宅で友人たちのことを考えると一日中涙が止まらないこともあったそうです。
その後に受診するようになった大学病院で、10番さんはHPVワクチン接種後の自己免疫性障害と診断され、免疫吸着療法を開始したところ、一時はひらがなも書けなくなっていた10番さんの症状は徐々に改善し、最近は杖なしで歩ける程度まで回復しました。
19歳になった今は、大検を受け、医学部合格を目指して勉強を続けていますが、今でも記憶が抜け落ちており、小学校時代の友達から声をかけられても誰なのか思い出せず、悔しい思いをしているということでした。
最後に10番さんは、ワクチンの危険性が正しく伝わり、次の被害者が出ないことを願っていることを冷静な口調で裁判官に伝え、陳述を終えました。
続いて九州弁護団の島翔吾弁護士が、海外におけるHPVワクチン被害の広がりついての意見陳述を行いました。
島弁護士は、今年3月に開催された国際シンポジウムでの世界各国からの報告で、コロンビアでは日本同様の被害者700名がクラスアクションと呼ばれる裁判に参加しており、接種率は90%以上から16%程度まで落ち込んでいることや、アメリカ合衆国の多くの州で、ワクチンの有効性の証明は不十分であり、副反応リスクも明らかではないといった理由で、HPVワクチンの接種が就学要件とはされていないことなどを、わかりやすく説明しました。
裁判の後の報告集会は、裁判所からほど近い福岡市科学館6階サイエンスホールで行われました。
意見陳述を行った原告番号10番さんは、「被告らはずっと同じ主張を繰り返すばかりで被害に向き合ってくれていない」、「苦しかった経験はなくなることはない」と語り、10分間の意見陳述で言い尽くせない、たくさんの辛い思いがあったことが伝わってきました。
集会に参加して下さった多くの方からも応援の熱いメッセージをいただきました。
薬害肝炎訴訟全国原告団九州支部共同代表の出田妙子さんからは、薬害肝炎の裁判でも、法廷での尋問などで本当に辛く悔しい思いをすることもあったが、最後には被害回復を勝ち取り、肝炎の治療法の前進も得られたことをお話いただき、とても勇気づけられました。
大分からは複数の看護学生さんが参加して下さり「私もHPVワクチンを接種したことがある」「意見陳述を聞いたけど、他人事とは思えない」「これからも支援をしていきたい」といった応援コメントをいただきました。
最後に九州原告団の梅本邦子代表と、九州弁護団の小林洋二代表から、本日の来場者に感謝の気持ちを伝え、多くの来場者とともに、引き続き原告団・弁護団・支える会が団結してこの訴訟を闘っていく決意を確認することができました。
会場を出ると、付近は暗くなっており、クリスマスのイルミネーションが綺麗でした。
10番さんをはじめとする原告のみなさんの症状が回復し、楽しくクリスマスを迎えることができる日がくることを願ってやみません。
次回の九州訴訟は来年4月22日(月)です。どうか引き続きご支援下さい。