多くの人に伝えたい~HPVワクチン薬害大阪訴訟第10回口頭弁論が開かれました

 2019年3月5日、春の気配を感じる暖かさの中、大阪訴訟第10回口頭弁論期日が開かれました。
 この日も朝から弁護団が淀屋橋駅前で期日の告知と訴訟の支援を求めてビラ配りを行いました。

 今回も大阪地方裁判所には多くの方が傍聴券を求めて集まり、傍聴席は満席となりました。
 本日の法廷では、原告16番さんの意見陳述と弁護団のプレゼンテーションが行われました。

大阪地方裁判所
大阪地方裁判所

 原告16番さんの意見陳述では、ワクチン接種後腕が上がらなくなるくらいの痛みが生じたこと、その後体に様々な異変が生じ、当時通っていた高校を休まざるを得なくなったこと、何とか大学に進学しアルバイトにも挑戦したが、症状の重さから結局アルバイトを1週間で辞めなくてはならなくなったことが語られました。
 具体的な症状については、疲労感や、頭に輪っかをはめられて横からグイグイ締め付けられるような痛み、光過敏、めまい、簡単な数字の順番がわからなくなる等様々な症状に悩まされたことを話しました。
 そして、このような症状を周りの人たちに話すことができず、一人で抱え込み孤独を感じていたと話され、最後に「みんなに同情してほしいのではなく、多くの人に伝えたい、理解してほしい、また同じ症状で悩んでいる人の力に少しでもなりたい」と訴えて、陳述を締めくくりました。

 弁護団のプレゼンテーションでは、諸外国におけるHPVワクチンに関する状況、危険性に関する被告企業らの証拠の引用が誤導を生むものであること、疫学的見地からしてHPVワクチンの接種と本件の被害には因果関係が認められることについて説明をしました。

閉廷後の記者会見でプレゼン内容を解説する安田知央弁護士(大阪弁護団)
閉廷後の記者会見でプレゼン内容を解説する安田知央弁護士(大阪弁護団)

 まず、本件は日本で生じた被害であり、被告企業らが海外状況をことさらに持ち出すのは誤りです。また、海外の状況を見たとしても、海外でも多くの副反応被害が報告されており、他ワクチンと比較してHPVワクチンの接種率は低く、HPVワクチンが海外で支持されているということはできません。

使用したスライドより:米国内での他ワクチンとの扱いの相違(上:他ワクチン、下:HPVワクチン)
使用したスライドより:米国内での他ワクチンとの扱いの相違(上:他ワクチン、下:HPVワクチン)

 また、被告企業らが提出した証拠の中には、不正確な論拠に基づく証拠、一部の内容のみを恣意的に抜き出した証拠等が含まれており、誤った認識へと誘導しようとするものとなっています。

 さらに、接種時期のピークと症状発現のピークに時間的関連性があること、HPVワクチン接種回数と本件被害の新規患者数との関連性が認められること、Chandlerらが行ったクラスター分析の結果からすれば、HPVワクチンの接種と本件被害には因果関係が認められます。

使用したスライドより:Chandlerらによる国際的データベースの有害事象のクラスター解析結果の解説
使用したスライドより:Chandlerらによる国際的データベースの有害事象のクラスター解析結果の解説

 本日も傍聴できなかった方のために、法廷での期日開催と並行して、法廷外企画として、法廷でなされる原告及び被告らの主張の内容を分かりやすく説明するとともに、法廷で行われている弁護団のプレゼンテーションも同じ内容でお伝えしました。

 期日後に行われた報告集会では、弁護団から期日で行われたやりとりについての報告が行われました。
そして、それに引き続いて関西大学社会学部の今川さん、五百藏さん、村上さんが作成したドキュメンタリー映像の上映会が行われました。

 このドキュメンタリー映像は、3人が所属するゼミの活動として作成したもので、原告さんやその家族の方、原告弁護団、被告企業、国への取材をもとに構成されていました。内容としては、被害者が置かれている切実な状況を伝えるものとなっており、皆さん真剣な様子で視聴をされていました。

児玉三紀子HPVワクチン薬害大阪訴訟原告団代表
児玉三紀子HPVワクチン薬害大阪訴訟原告団代表

 その後、このドキュメンタリーについて、映像に出演していた原告19番さん、原告団代表の児玉さん、支援者の方からお話をいただき、最後に、ドキュメンタリーを作成した今川さん、村上さんからもお話をしていただきました。

ドキュメンタリーを制作した今川さん(写真上右)と村上さん(写真下)
ドキュメンタリーを制作した今川さん(写真上右)と村上さん(写真下)

 次回の大阪訴訟期日は2019年5月28日です。傍聴抽選用紙配布は午後1時ころからの予定ですので、余裕をもってご来場いただければと思います。
 今後とも引き続きご支援のほど、よろしくお願い申し上げます。