GSK・MSDの不当なマーケティングの責任~HPVワクチン薬害名古屋訴訟第11回口頭弁論期日

 2019年7月4日、名古屋地方裁判所でHPVワクチン薬害名古屋訴訟第11回口頭弁論期日が開かれました。

 今回の期日からの新たな取り組みとして、この問題を少しでも多くの方に知っていただくために、名古屋訴訟支援ネットワークによる企画として街頭活動を行いました。

 当日は午前11時から名古屋駅前で街頭に立ち、メッセージパネルを掲げながら、HPVワクチンの問題点や被害の実情を知ってほしいと呼びかけました。

 梅雨の真っ只中で天候が大きく心配されましたが、幸いにも雨に降られることもなく、予定を順調に進めることができました。

 この日は、支援ネットや原告の皆さんの発案で、ポケットティッシュを配布しました。街頭に立ったのは30分ほどでしたが、原告さんと若い支援者の方で一緒に考えたデザインのポケットティッシュを、500個ほど配ることができました。差し込まれたチラシのQRコードを読み取ると、支援ネットワークのFacebookアカウントが表示される仕組みとなっています。

 中にはその場で早速QRコードを読み取って、支援ネットワークのFacebookのページにアクセスして下さったもいらっしゃいました。

 HPVワクチン名古屋訴訟支援ネットワークのFacebookアカウントは、下記のURLからもアクセスすることができますので、是非、多くの方にシェアしていただければと思います。

 HPVワクチン名古屋訴訟支援ネットワーク https://www.facebook.com/hpv.nagoya

 

 幸い午後に入っても雨は降らず、午後1時からの期日前集会に集まって下さった大勢の皆さんとともに、名古屋地方裁判所に入廷しました。

 当日の法廷では、中根祐介弁護士より、被告GSKと被告MSDが、HPVワクチンの接種緊急促進事業と定期接種化について被告国とともに共同不法行為責任を負うことについて解説しました。

 幸いこの日はスライド上映設備のある裁判員裁判用の大法廷を使用できましたので、法廷内の画面にスライドを表示しながら、わかりやすく説明することができました。

期日後の報告集会で上映したスライドの内容を解説する中根弁護士
期日後の報告集会で上映したスライドの内容を解説する中根弁護士

 以下、当日使用したスライドの一部をご紹介します。

 医療用医薬品を一般市民に直接広告することは、医学的知識のない一般市民に悪影響を及ぼす危険があるため禁止されています。これは諸外国でほぼ共通する規制となっています。

 そのため、GSKやMSDも所属する業界団体である日本製薬工業協会(製薬協)は、製薬企業が一般向けの疾患啓発活動を行う際にも、医療用医薬品の広告活動と疑われないようにする必要があることを定めています。

 さて、被告GSKが2010年に放映した「しきゅうのお知らせ」というテレビCMでは、「な~んと女性の80%が」「子宮頸がんの原因ウイルスに感染」「でもね、予防~ワ~クチンできました~。さあ~しきゅうお医者さんへ」との内容で、HPVワクチンの接種を勧めています。

 このCMの中には、感染者すべてが子宮頸がんを発症するわけではないことや、副反応に関する情報には全く言及はありません。ワクチンを接種するかどうかを考える正しい判断材料が提供されないまま、ワクチンの接種を強く勧める内容となっているのです。

 また、サーバリックスという商品名は出てきませんが、当時流通していたHPVワクチンはサーバリックス1商品のみです。このCMは疾患啓発の体裁を取ってはいるものの、実質的には自社製品の宣伝広告活動に等しいものでした。

 ガーダシルはサーバリックスよりも承認が遅れた結果、後発商品として出発したワクチンです。このガーダシルを製造販売した被告MSDも、GSKと同様に疾患啓発の形を借りたテレビCMを流しています。

 2012年のCMでは、GSKのCMと同様に、ワクチンによる副反応への言及はありませんでした。

 しかも「子宮頸がん予防ワクチンには、種類があります」ということを強調しています。わざわざ「種類があるんだよね」「へえ」というかけあいのセリフまで入っています。これは、先行品のサーバリックス以外にもガーダシルという自社製品があることについて注意喚起しようとするものです。

 このように、被告MSDも、啓発に名を借りて自社製品の宣伝広告活動に等しいマーケティングを大々的に実施していたのです。

 このような不当なマーケティング活動が堂々と行われる中で、原告はHPVワクチンを接種し、今も重篤な副反応被害に苦しみ続けています。

 被告国は、HPVワクチンの接種緊急促進事業の実施と定期接種化によって多くの被害者を生み出しました。被告国の責任は明らかです。

 そして、こうした被告国によるHPVワクチン事業に対し、被告GSKと被告MSDは、大量のワクチンを供給しただけではなく、こうした事業を実施するよう積極的なロビー活動を繰り広げ、さらには不当な広告宣伝活動を実施しました。両社がこのように危険なワクチンの接種を推進したことについて、被告国とともに共同不法行為責任を負うことは明らかです。

 法廷での意見陳述では、被告企業が所属する企業グループ(英GSK社・米メルク社)が数々の不当なマーケティングによる不祥事を起こした時期は、HPVワクチン薬害の発生時期と重なっていることも説明しました。

 特に被告MSD自身が、2億円を超える金銭を日本国内の医療関係者に提供したことを理由として製薬協から会員資格停止処分を受けていたさなかに、ガーダシルの不当なプロモーションを本格化してHPVワクチンによる薬害被害者を生み出したことは、厳しい非難に値します。

 法廷での意見陳述を終えた後は、名古屋地方裁判所の司法記者クラブで会見を行い、こうした被告企業らの安全性を軽視した姿勢がHPVワクチン薬害を引き起こしたことを、メディアの方々に解説しました。

 法廷終了後、愛知県弁護士会館5階ホールで報告集会を行いました。

 集会では午前中の街頭活動の様子を撮影した写真や、実際に使用したパネルをお見せしました。来場者からは、引き続きこうした街頭での情報発信を続けていきたいという熱い応援のメッセージもいただくことができました。

 各地の弁護団からも、それぞれの地域で工夫を凝らしながら支援の呼びかけを行っていく中で、確実に支援の輪が拡がっていることを、来場者に説明しました。

 名古屋原告団の谷口鈴加代表(原告1番母)からも、より一層原告としても頑張っていきたいとの決意をお伝えし、引き続きのご支援を呼びかけました。

 次回の口頭弁論期日は、2019年10月10日午後2時から開催されます。

 副反応被害に苦しむ日々が続く中、原告・弁護士・支援者が明るい気持ちでお互いに支え合うことを心掛けながら、この裁判をたたかっています。

 是非次回も傍聴にお越し下さい。