Q HPVワクチンの有効性に関するフィンランドの研究の問題点を教えてください。

 2018年5月に発表されたフィンランドの研究は、HPVワクチンを推進する立場の人々によって、HPVワクチンによる子宮頸がん(浸潤がん)減少効果を示す根拠として紹介されることがあります。

 しかし、この発表はあくまで速報にすぎないため、この結果をもって、子宮頸がんの予防効果が示されたと判断することはまだできないと考えるべきです。

 また、公表された内容から判断される範囲でも、本速報の分析方法と結果にはいくつかの問題点が存在します。

 まず、この統計においてはHPVワクチンの接種群と非接種群のそれぞれで関連浸潤がんの発生率を比較しているところ、非接種群の中には子宮頸がんではない浸潤がんの人が含まれています。そして子宮頸がんにおける接種群のみを取り出して比較した場合には、統計学的に有意な結果は得られないという結論となります。したがって、この統計では適切な結果が提示されているとはいえません。結局、この速報では子宮頸がんについての有意差は示されていないのです。

 次に、有効性の検証については、ワクチン接種群と非接種群とを設定し両群に適切な検診と標準治療介入を同様に保証したうえで、十分な対象者数と追跡期間に基づいて浸潤がんの発生率を比較して、浸潤がんの減少効果が示された場合には、有効性の検証が確実になされたといえるものです。しかし、本速報においては比較対象となった接種群と非接種群について、対象者の背景や検診の質、頻度が両群において同様に保証されていない可能性があり、この点を考慮した分析は行われていないことから、結果の妥当性は低いと言わざるを得ません。

 さらに、本速報の著者のうちの4人はワクチン製造販売メーカー(GSK等)から研究助成金を受け取っており、HPVワクチンの臨床試験を行った研究グループのメンバーですし、本速報の解析はGSKからも助成を受けて行われていることからすると、本速報にはHPVワクチン製造販売メーカーとの明らかな利益相反関係が存在します。

 このようにこのフィンランド研究には多くの問題が含まれているのですから、この速報の結果をHPVワクチンによる子宮頸がんにおける浸潤がん減少効果の根拠として扱うことは不適切です。

 フィンランドの研究の問題点については、薬害オンブズパースン会議が詳細な見解を公表しています(「HPVワクチンの有効性に関するフィンランドの研究に関する見解 -子宮頸がん予防効果を示すものとはいえない-」)。