日本産科婦人科学会に要望書を提出しました

2017年12月22日、HPVワクチン薬害訴訟全国原告団・弁護団は、日本産科婦人科学会に対して、接種勧奨の再開を求める本年12月9日の声明の撤回と被害者のヒアリングの実施を求める要望書を提出しました。

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日本産科婦人科学会宛要望書
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要望書提出に関する全国原告団・弁護団による記者会見(2017/12/22)
要望書提出に関する全国原告団・弁護団による記者会見(2017/12/22)

2017年12月22日

日本産科婦人科学会
理事長 藤 井 知 行 殿

要 望 書

HPVワクチン薬害訴訟全国原告団
代表 酒井七海
HPVワクチン薬害訴訟全国弁護団
共同代表 水口真寿美
同  山西美明

要望の趣旨

  1. 貴会は、平成29年12月9日付けの「HPVワクチン(子宮頸がん予防ワクチン)接種の早期の勧奨再開を強く求める声明」を撤回し、ウェブサイトから削除して下さい。
  2. 貴会において、HPVワクチン副反応被害者のヒアリングを行って下さい。

要望の理由

1 はじめに

 貴会は、平成29年12月9日付けの「HPVワクチン(子宮頸がん予防ワクチン)接種の早期の勧奨再開を強く求める声明」(以下、「声明」といいます)において、国に対して一刻も早くHPVワクチン接種の積極的勧奨を再開することを強く求めるとしています。
 しかし、以下に述べるとおり、声明におけるHPVワクチンの安全性に関する評価・検討はきわめて不十分であり、国民に対する情報提供としても不適切であると考えます。

2 声明の撤回について

(1) 声明による被害の事実の切り捨て

 声明において、HPVワクチンの安全性に関連するものとしては、「平成25年4月に予防接種法に基づき定期接種化されたにもかかわらず、接種後に様々な症状が報告されたことにより、わずか2ヶ月後に接種の積極的勧奨が中止され、その後も一部の研究者の科学的根拠のないデータや報道等により、国民の正しい理解を得られないまま、すでに4年半もの長期にわたり勧奨が再開されないままとなっております」との記載があるのみです。
 HPVワクチンの副反応に苦しむ被害者たちは、何年にもわたって、自らに起きている多様な症状の原因も分からないまま、多数の医療機関を受診してきました。詐病扱いされた者も少なくありません。そして、HPVワクチンの副反応と診断された後の現在も、治療法が確立していない中、信頼して診療を受けられる医療機関は多くはありません。
 貴会が「一部の研究者の科学的根拠のないデータ」と記載されているのは、このような厳しい環境の中、被害者たちと真摯に向き合い、治療と研究に取り組む研究者が公表しているデータや研究成果のことでしょうか。
 これらのデータや研究成果は、被害者が身をもって提示した症状や検査結果に基づくものであり、それを科学的根拠がないと切り捨てることは、被害発生の事実、さらに言えば被害者の存在そのものを否定するに等しいことです。
 貴会の声明に、被害者たちは大きな衝撃と悲しみを感じています。

(2) 国内外の研究等が示す被害発生の事実

 HPVワクチン接種後にみられる症状については、その治療と研究に尽力している国内の複数の研究者によって研究が公表され、症状が感覚系障害(頭痛、関節痛、筋肉痛、視覚障害、しびれ等)、運動系障害(不随意運動、脱力、筋力低下、歩行運動失調、けいれん等)、認知・情動系障害(学習障害、記憶障害、見当識障害、睡眠障害等)、自律神経・内分泌系障害(発熱、月経異常、過呼吸等)等多岐にわたり、これらの症状が複数重なって発現する症例もみられ(重層性)、各症状の増悪と改善を繰り返す症例も少なくないという共通の特徴が示されています。また、同様の症状は、国に対する副反応報告でも多数報告され、さらに海外でも複数の研究が公表されています。
 HPVワクチンの接種後に、このような症例が多数報告されていることは客観的な事実です。事実に対する評価において意見が分かれることは当然あり得ることですが、科学的検討の対象となるべき、安全性に対する懸念を示す事実そのものを、特段の理由もなく「科学的根拠がない」として無視するのは、およそ科学的とはいえないでしょう。

(3) 積極的勧奨再開による被害再発の危険性

 上記の研究や副反応報告は、HPVワクチンの安全性に対する重大な疑問を示しています。これに対して、安全性に対する疑問を否定しうるような研究は存在しません。このような状態で積極的勧奨を再開すれば、同様の副反応症例が発生する危険性はきわめて高いといえます。被害者は、自分たちと同じ被害を二度と起こさないで欲しいと強く願っています。積極的勧奨の再開など到底認めることはできません。

(以上の詳細や文献等については添付の厚生労働大臣ほか宛て「『HPVワクチン接種後に生じた症状に関する新たなエビデンスの有無についての検討』の見直しを求める意見書」をご参照下さい)

(4) 不適切な情報提供

 以上のとおり、HPVワクチン接種後に重篤な副反応が報告されていることは客観的事実であり、これに対して危険性を否定しうる研究は存在しません。にもかかわらず、現在得られている副反応に関する事実を記載せず、一方で有効性を強調するのは、貴会が標榜する「国民と行政に対して正確な科学的情報を発信する責務」に反する、不適切な情報提供であり、国民の健康に対する危険をもたらすものです。
 よって、私たちは、貴会に対し、声明の撤回とウェブサイトからの削除を求めます。

3 被害者ヒアリングについて

 そもそも、貴会は、HPVワクチン副反応被害の実態を把握されているのでしょうか。その症状の特徴から、被害者のほとんどは、産婦人科以外の医師を主治医としています。前記の国内研究者の研究にも、産婦人科医によるものはありません。そして、被害を「科学的根拠のないデータ」として切り捨てている声明の姿勢からも、貴会はHPVワクチンの副反応の病態や被害実態についてあまりにも無理解であると考えざるを得ません。
 HPVワクチンの是非についての検討には、被害の事実を正しく把握されることが不可欠であると考えます。意見を述べるのであれば、まず、被害者の声を聞き、被害の実情を知って下さい。
 よって、私たちは、貴会に対し、HPVワクチン副反応被害者のヒアリングを行うよう求めます。

以 上