日本医師会・日本医学会合同公開フォーラム 「HPVワクチンについて考える」の開催に対する抗議


 

2018年10月11日

公益社団法人日本医師会
会長 横 倉 義 武 殿
日本医学会
会長 門 田 守 人 殿

 

日本医師会・日本医学会合同公開フォーラム
「HPVワクチンについて考える」に対する意見

 

HPVワクチン薬害訴訟全国原告団
代表  酒 井 七 海
HPVワクチン薬害訴訟全国弁護団
共同代表  水 口 真寿美
同     山 西 美 明
<連絡先>               
HPVワクチン薬害訴訟全国弁護団
 〒102-0084 東京都千代田区二番町12番地13
セブネスビル3階
電話03(6268)9550
https://www.hpv-yakugai.net/

 

 

1 日本医師会と日本医学会は、2018年10月13日に、合同公開フォーラム「HPVワクチンについて考える」(以下「本フォーラム」といいます)の開催を予定しています。

 HPVワクチンについては、その接種後に、感覚系障害(頭痛、関節痛、筋肉痛、視覚障害、しびれ等)、運動系障害(不随意運動、脱力、筋力低下、歩行運動失調、けいれん等)、認知・情動系障害(重度の倦怠感、学習障害、記憶障害、見当識障害、睡眠障害等)、自律神経・内分泌系障害(発熱、月経異常、過呼吸等)等の多岐にわたる多様な症状が一人の患者に重層的に現れるという副反応症例が多数報告され、社会問題となっています。

 この副反応症状の原因について、厚生労働省は、その病態解明が進んでいなかった2014年1月の時点で、接種の痛みと痛みに対する不安が惹起する心身の反応(機能性身体症状)であるとの結論をまとめ、現在もその立場を維持しています。しかし、日本において多数の副反応患者の診療と研究に携わっている医師たちは、HPVワクチンの成分による神経障害ないし免疫異常であるとの考え方をとり、その考え方に基づく治療によって一定の成果を挙げています。

 また、日本と同様の副反応症例は海外でも報告されており、HPVワクチンの安全性については国内外で議論が続いています。

 ところが、本フォーラムの発表者には、HPVワクチンの成分による副反応であるとの立場の医師は一人も含まれておらず、HPVワクチンの接種を推進する立場をとってきた医師や、機能性身体症状説をとる医師のみが発表者となっています。これは、2014年12月に開催された日本医師会・日本医学会合同シンポジウム「HPVワクチンについて考える」において、HPVワクチンの成分による副反応であるとの立場をとる西岡久寿樹医師、横田俊平医師、および池田修一医師が発表者(指定発言を含む)となっていたのと対比しても、明らかにバランスを欠いています。

 日本医師会の釜萢敏常任理事は、本フォーラムについて、「HPVワクチンの積極的な接種勧奨の再開が必要だと考えている」としたうえで、「これまで蓄積されたエビデンスを説明し、HPVワクチンをめぐる問題について国民の理解を得ることが狙い」であると述べたとされていますが(2018年9月19日定例記者会見)、危険性を示す研究を行っている医師を意図的に除外し、国民に一方的な情報のみを提供して積極的な接種勧奨の再開を推し進めようとするのは不当であり、日本医師会および日本医学会の団体としての性格を考えれば著しく不適切です。

 

2 私たち弁護団のまとめによれば、本年5月時点で、HPVワクチンを被疑薬として医薬品副作用被害救済制度による障害年金または障害児養育年金の支給決定を受けた患者は40名おり、接種100万人当たりの認定数は11.765人となっています(別紙参照)。これは、他の定期接種ワクチンの予防接種健康被害救済制度による障害年金、障害児養育年金、遺族年金又は遺族一時金の給付を受けた人が100万人当たり1.075人であるのと比較して著しく高く、HPVワクチン接種後に重篤かつ難治性の副反応患者が多数現れていることを裏付けています。

 しかも、このような認定状況をもってしても、救済制度による被害者の救済は十分ではありません。厚生労働省は、前述の通り副反応症状は機能性身体症状であるとの立場をとっているため、副反応に特徴的な症状を訴えていても、機能性身体症状とは認められないことを理由に認定されない患者が存在し、また学業や就労について著しい困難を強いられているのに、障害年金または障害児養育年金の認定には至らない症状であるとして認定を受けられない患者も多数います。

 最近になり、HPVワクチンの積極的勧奨の中止以降、副反応症状と同様の症状を訴える患者の発生が止まったとする報告が複数の研究者からなされています。しかし、HPVワクチンの成分による副反応との立場をとるにせよ、機能性身体症状であるとの立場をとるにせよ、接種後の副反応症状の発生を効果的に防止する方策は見つかっていません。そのため、積極的接種勧奨を再開すれば、再び同様の副反応被害が発生するとの指摘がなされています。このような状況において、日本医師会および日本医学会が積極的接種勧奨の再開を推し進めようとするのはあまりにも無責任であり、私たちは、本フォーラムの開催に強く抗議します。

 

3 副反応被害者たちのいちばんの願いは「元の体に戻してほしい」ということであり、そのために力を尽くすことこそ、日本医師会および日本医学会の本来の役割ではないでしょうか。

 両会は、2015年8月に「HPVワクチン接種後に生じた症状に対する診療の手引き」を発刊しましたが、完治に至る治療法を提示したものではなく、現在も難治性の重篤な症状に苦しむ患者が多数存在することは、すでに述べたとおりです。

 私たちは、医学の力と心に対する被害者たちの期待に応えて、日本医師会および日本医学会が、HPVワクチン副反応症状の病態解明と治療法の確立に総力を挙げて取り組んで下さるよう希望します。

以 上

 


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日本医師会・日本医学会合同公開フォーラム「HPVワクチンについて考える」に対する意見
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