薬害被害者は何と闘ってきたのか~第21回薬害根絶フォーラムに参加しました

 2019年10月20日、名古屋市中区の鯱城ホールにおいて、第21回薬害根絶フォーラムが開催されました。

 薬害根絶フォーラムは、全国薬害被害者団体連絡協議会(薬被連)が、薬害の根絶に向けて毎年開催している集会です。名古屋では今回が初開催となりました。

 HPVワクチン薬害訴訟全国原告団も、薬被連を構成する10薬害12団体の一員として、今回のフォーラムに参加しました。

 秋空の下、全国各地から150名を超える参加者が会場に集まり、薬害当事者の声に耳を傾けました。

 第1部では、サリドマイド・スモン・筋短縮症・陣痛促進剤・HIV・薬害肝炎・イレッサ・ヤコブ・HPVワクチンといった薬害被害の当事者が、それぞれの薬害の概要と被害体験を順に語りました。会場では聴覚障害の方に向けたリアルタイム字幕が順次提示され、発言内容が文字でも会場に伝えられました。

 薬害肝炎全国原告団名古屋支部代表の金田和子さん。婦人科手術の際に使用されたフィブリノゲン製剤でC型肝炎に罹患した苦しみを語りました。

 大阪HIV薬害訴訟原告団理事の橋本則久さん。血友病の治療の際に使用された血液製剤によるHIV感染を23歳で告知され、病気そのものに加えて差別・偏見とも闘ってきた経験を語りました。

 サリドマイド被害者の森康洋さん。サリドマイド薬害に関する社会の認識の風化に対して、情報発信の知恵を絞る必要があると訴えました。

 イレッサ薬害被害者の会代表の近澤昭雄さんはご事情で来場がかないませんでしたが、副作用は軽微だと言われる中でイレッサを服用し、間質性肺炎による呼吸苦の中で亡くなられた娘さんのお写真の下で、近澤さんからのメッセージが代読されました。

 左から3人目:出産時に陣痛促進剤を使用された娘さんとともに、現在も脳性まひで療養中のお孫さんの介護に従事する石川きみこさん(陣痛促進剤による被害を考える会会員)。介護のため来場できない娘さんの代わりに被害の実情を報告しました。8年にわたる裁判の経験は書籍にもなっています。

 右:風邪の治療のための注射で大腿四頭筋拘縮症となった森俊樹さん(薬害筋短縮症の会)。歩行機能を回復するための手術の経緯を説明し、筋拘縮症の手術を担当できる医師の不足などが生じることのないよう、医療従事者の連携を求めたいと訴えました。

 左端:お母様(スライド左の女性)をヒト乾燥硬膜を介したクロイツフェルト・ヤコブ病で失った谷まりこさん(薬害ヤコブ病大津訴訟原告)。闘病日記を読み返すと今も涙が止まらず、無念に思うとの心境を来場者に伝えました。

 今年の3月に福岡県スモンの会の資料から発見された、1975年に広島で作成されたスモン被害の記録映画も上映されました。薬害資料の散逸を防ぐためのアーカイブ創設は喫緊の課題となっています。

 ウイルス原因説という誤りによって、スモン被害者は社会からの差別偏見にも晒されました。

 この当時から使用されてきた被害救済と再発防止というスローガンを、40年以上経過した今も叫ばなければならないのはなぜなのか?という疑問が、来場者の胸に去来する映像でした。

 HPVワクチン薬害名古屋訴訟原告の落合晴香さんは、HPVワクチン接種後に自身の体に生じた変調を説明し、「1日も早い治療法と救済の確立を、これ以上被害が広がらないことを心から望みます」と発言しました。

 第2部では、勝村久司さん(陣痛促進剤による被害を考える会)が進行役となり、「薬害被害者は何と闘ってきたのか」をテーマとして討論を行いました。

 薬害を隠し何もなかったことにしようする力、「それでも人間か」と言いたくなるような一部の人たちとの闘いであったと語る佐藤嗣道さん(サリドマイド被害者)。

 ウイルス原因説で社会から迫害されて自死を選んだ人も少なくないことを説明する高町晃司さん(京都スモンの会会員)。ご自身は5歳時に服用したキノホルム製剤で視力低下を来たしたため、普通に就職できないという壁にぶちあたり、人生を狂わされたと感じたそうです。

 当時は有効な治療法がなく、原告が訴訟中に次々と命を落としていくという中で、まさに「生きるための闘い」であり、しかも「エイズパニック」という差別偏見との闘いでもあったと語る花井十伍さん(大阪HIV薬害訴訟原告・薬被連代表世話人)。

 HPVワクチン被害者として落合さんとともに登壇した谷口鈴加さん(HPVワクチン薬害訴訟名古屋原告団代表・名古屋原告1番母)。心因性の症状とされたりする中で、世間の無理解と今まさに闘わざるを得ない状況にあることを説明し、何よりも治療法の開発と本当の意味で受け皿となる医療機関の整備を求めたいと訴えました。

 薬害をこれ以上起こさないためには、被害者が自分の体験について情報発信することが重要なので、そうした発信の場が少ないという壁を崩していきたいと語る落合さん。

 フォーラムでの議論を通じて、薬害とは決して他人事ではなく、誰もが遭遇するかもしれない重大な問題であるという認識を、来場者で共有することができました。そして、多くの薬害被害者の体験を知ることによって、HPVワクチン薬害が過去の数々の薬害と同じ構図の下でまたも繰り返されてしまった薬害であることが、より一層浮き彫りとなったように思います。

 今回のフォーラムに参加して、当事者自身が被害を語ることによって理解を広げていくことができるということ、そして何よりも、HPVワクチン薬害訴訟の原告が多くの人々による励ましの輪に囲まれていることを、皆で実感できた1日となりました。

 これからもどうかご支援下さい。