HPVワクチン薬害全国原告団・弁護団は、薬害根絶デーである2021年8月24日に、9価HPVワクチン(シルガード9)の定期接種化に反対する意見書を提出しました。
こうした意見を述べるにあたって、当原告団・弁護団は、国立感染症研究所の作成した「9価ヒトパピローマウイルス(HPVワクチン)ファクトシート」の問題点を精査した結果を添付しました。
多くの方が「HPVワクチンに関する真のファクト」に目を向けていただけることを心から望みます。
HPVワクチンに関する真のファクト
9価HPVワクチン(シルガード9)ファクトシートの問題点
2021年8月24日
HPVワクチン薬害訴訟全国原告団
HPVワクチン薬害訴訟全国弁護団
はじめに
本意見書は、国立感染症研究所が2021年1月31日付けで新たに作成し、2021年4月20日にワクチン小委員会に提出された「9価ヒトパピローマウイルス(HPVワクチン)ファクトシート」(以下、単に「9価ワクチンファクトシート」と表記する)の問題点を明らかにし、HPVワクチンに関する真のファクトを提示するものである。
MSD社の9価HPVワクチン(シルガード9)が、2020年7月21日に薬事承認され、厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会予防接種基本方針部会ワクチン評価に関する小委員会(以下、「ワクチン小委員会」と表記する)は、9価HPVワクチンを定期の予防接種に用いることの是非について検討することとし、そのためのファクトシート作成を国立感染症研究所に依頼した。
従来の2価及び4価のHPVワクチンは、2010年7月7日付「ヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチンに関するファクトシート」(以下、これを「ファクトシート2010年版」と表記する)及び2011年3月11日作業チーム報告書におけるファクトシート追加編(以下、これを「ファクトシート追加編」と表記する)によって収集・整理された情報に基づき、2010年11月から、緊急促進事業の対象として接種勧奨、公費負担が行われ、2013年3月の予防接種法改正によって定期接種と位置付けられたものの、深刻な副反応を理由として、定期接種化からわずか約2ヶ月後の同年6月に積極勧奨が中止された。それから8年以上の期間が経過したが、いまだ、積極勧奨の再開には至っていない。
当原告団・弁護団は、上記のような2価及び4価のHPVワクチンに関する経過を踏まえ、新たに承認された9価HPVワクチンについて、同じ過ちが繰り返されることを懸念し、2021年1月22日付けで国立感染症研究所宛「HPVワクチンファクトシート作成に関する意見書」を発出し、従来のファクトシート(前記ファクトシート2010年版及び「ファクトシート追加編)の内容を抜本的に見直すとともに、この間に蓄積された2価及び4価のHPVワクチンに関する危険性の情報を網羅的に収集するよう要望した。
ところが、今回、ワクチン小委員会に提出された9価ワクチンファクトシートは、上記要望に反し、従来のファクトシートの問題点をそのまま踏襲するとともに、この間に蓄積された2価及び4価のHPVワクチンに関する危険性の情報の適切な評価を欠くものとなっている。このようなファクトシートに基づいて9価HPVワクチン(シルガード9)の定期接種化の是非を検討することは、従来の2価及び4価ワクチンが引き起こした深刻な副反応被害から目を背けるものであり、許されるべきものではない。
目次
(3)若い世代での子宮頸がん罹患数、罹患率は減少傾向にあること
(3)若い世代での子宮頸がん死亡数、死亡率は減少傾向にあること
3 HPVワクチンで予防できないHPVに関連しない子宮頸がんの存在
(2)前がん病変の予防効果をもって有効性を認めることができないこと
(3)HPVワクチンが子宮頸がんを減少させたとの効果を導けないこと
(4)オーストラリアと英国ではワクチン接種世代で子宮頸がんが微増
(3)秋田県の子宮頸がん検診受診女性の細胞診異常の検討について
(4)宮城県での子宮頸がん検診受診女性の細胞診異常の結果について
(2)動物実験を含め、HPVワクチンの成分の危険性を示す各種報告
(6)安全性が確認されたとするWHOや各国規制当局等の見解の問題性
第1 子宮頸がんの基本的知見
9価ワクチンファクトシート1.(2)①1)(12頁以下)では、子宮頸がんの年齢調整罹患率について1999年から2010年までの国際比較のグラフを示して(図4)、英米、オーストラリアなどで子宮頸がん罹患率はゆるやかに減少しているが、対照的に、日本では子宮頸がん罹患率の増加が続いていると指摘する。
確かに、国立がん研究センターが公表するがん情報サービスの「がんに関する統計データのダウンロード」(以下「がん統計」という)中のグラフデータベース[1](以下、「データベース」という)によると、全年齢で見た子宮頸がんの年齢調整罹患率(全年齢・全国推計値・世界人口)は、2011年まで増加を続けていた。
しかし、2011年の12.1(人口10万対)をピークに、その後は減少に転じ(別紙1「子宮頸がん 年齢調整罹患率(人口10万対) 年次推移」)、近年の子宮頸がんの年齢調整罹患率は、減少傾向ないし横ばいと言うことができる。
(3)若い世代での子宮頸がん罹患数、罹患率は減少傾向にあること
また、39歳以下の若い世代での罹患数は、2011年の2828人をピークに減少傾向であり、がん統計中の全国がん罹患データ(2016年~2017年)によると、2017年は1967人となり、2005年の1864人以来12年ぶりに2000人を下回った。
さらに、データベースに基づき罹患数、罹患率(人口10万人対)の年次推移を年齢層別に見ると、39歳以下の若い世代を含む次の年齢層ではいずれも、罹患数、罹患率が、以下に記載した年をピークに減少傾向にある(別紙2「子宮頸がん 年齢層別罹患数」及び別紙3「子宮頸がん 年齢層別罹患率」)。
このように、39歳以下の若い世代での罹患数、罹患率は、減少傾向にあるといえる。
【罹患数・罹患率のピーク時】
罹患数 罹患率
20〜24歳 2006年 2006年
25〜29歳 2011年 2011年
30〜34歳 2011年 2011年
35〜39歳 2010年 2014年
40〜44歳 2011年 2011年
したがって、日本では子宮頸がん罹患率の増加が続いているとの指摘は誤りである。
なお、9価ワクチンファクトシートでは、英米、オーストラリアなどで子宮頸がん罹患率はゆるやかに減少しているとも指摘しているが、イギリスとオーストラリアではワクチン接種世代で子宮頸がん発生率が微増している。この点は後述する。
9価ワクチンファクトシート1.(2)②(20頁以下)では、子宮頸がんの年齢調整死亡率が、日本では微増しており(図11)、日本における子宮頸がん死亡率の増加は、30歳代から50歳代前半までで顕著で、高齢層では逆に死亡率が減少する傾向がある(図12)と指摘する。
確かに、データベースによると、全年齢で見た子宮頸がんの年齢調整死亡率(全年齢・全国・世界人口)は、2014年まで増加を続けていた。
しかし、2014年の2.237(人口10万対)をピークに、その後は減少に転じ(別紙4「子宮頸がん 年齢調整死亡率(人口10万対) 年次推移」)、近年の子宮頸がんの年齢調整死亡率は、減少傾向ないし横ばいと言うことができる。
(3)若い世代での子宮頸がん死亡数、死亡率は減少傾向にあること
また、死亡数、死亡率(人口10万人対)の年次推移を年齢層別に見ると、39歳以下の若い世代を含む次の年齢層では、死亡数、死亡率のピークは以下の記載のとおりである(別紙5「子宮頸がん 年齢層別死亡数」及び別紙6「子宮頸がん 年齢層別死亡率」)。
このように、39歳以下の若い世代での死亡数、死亡率は、減少傾向にあるといえる。
【死亡数・死亡率のピーク時】
死亡数 死亡率
20〜24歳 2009年 2009年
25〜29歳 2014年 2014年
30〜34歳 2010年 2010年
35〜39歳 2012年 2015年
40〜44歳 2014年 2011年
45〜49歳 2014年 2014年
50〜54歳 2002年 2018年
55〜59歳 2008年 2008年
60〜64歳 2012年 2012年
上記のように、9価ワクチンファクトシートでは、日本における子宮頸がん死亡率の増加は、30歳代から50歳代前半までで顕著で、高齢層では逆に死亡率が減少する傾向がある(図12)と指摘している。
しかし、かかる指摘は、年次推移における比較を述べているのか、年齢層別での比較を述べているのか、判然としない。
「死亡率の増加は、30歳代から50歳代前半までで顕著」との指摘は、年次推移における比較を述べているとすれば、上記(3)の説明から明らかな誤りである。年齢層別での比較を述べているとすれば、子宮頸がん死亡率は20歳代では極めて低いのであるから、30歳代から50歳代前半が高くなるのは当然であり、これを「顕著」と述べて強調することは著しく誤解を招く表現である。
また、「高齢層では逆に死亡率が減少する傾向がある」との指摘は、その表現と、年齢層別の死亡率を示した図12を引用していることから、年齢層別での比較を述べているとしか理解できないが、図12の年齢階級別死亡率の推移を見ても、高齢層の死亡率は減少しておらず、明らかな誤りである。
以上のとおり、日本での子宮頸がんの年齢調整死亡率は日本では減少傾向ないし横ばいであるから、微増しているとの指摘はあたらない。また、「日本における子宮頸がん死亡率の増加は、30歳代から50歳代前半までで顕著で、高齢層では逆に死亡率が減少する傾向がある」との指摘は、誤りないし不正確である。
3 HPVワクチンで予防できないHPVに関連しない子宮頸がんの存在
HPVの感染は、子宮頸がん(扁平上皮がん、腺がん)及びその前駆病変(CIN2及び3)等の発症原因であり、HPVワクチンは、HPV感染を予防することで、これらの疾患の発症を予防するものとされる。
この点、9価HPVワクチン(シルガード9)も、従来の2価及び4価HPVワクチン(サーバリックス及びガーダシル)と変わるところはない。
しかし、子宮頸がん全体の2割ほどを占める子宮頸部腺がんは、リスク要因、前がん病変からがん化する機序等について、HPV持続感染との関係を含め、未解明な部分が多い。そして、子宮頸部腺がんには、がん組織からHPVが検出されない、非HPV関連の腺がんが一定数あることが知られており、近時、腺がんのうち3割ほどがHPV陰性のがんであるとする指摘もある[2]。
以上のように、HPV感染に関連しないで発症する子宮頸がんが一定数あり、HPVワクチンはそれらの発症予防効果を期待できない。
この点は、子宮頸がん予防目的のワクチン接種を広く促進することの是非に関わる情報でありながら、従来のファクトシートにも、9価ワクチンファクトシートにもまったく言及がない。
HPVワクチンの接種を広く促進することの是非を評価するに当たっては、対象疾患たる子宮頸がんを予防する手段として、ワクチン以外にどのような方法があり、どの程度の効果が見込まれているのか等を検討する必要がある。
この点、子宮頸がんにおいては、検診という、死亡率や罹患率を減少させる効果が実証されており、かつ、より副作用が少なく安全な予防方法が存在する。ファクトシート追加編5頁にも、「子宮頸部擦過細胞診による子宮頸がん検診は罹患率・死亡率の減少効果が実証され、かつそのインパクトが大きく、すでに諸外国でも大きな成果を上げている。HPVワクチンの効果は特定のタイプに限定的と考えられるので、ワクチン導入は現在の子宮頸がん検診の実施を前提として行う必要がある」と指摘されていた。
検診による予防は、HPV型が限定されないことに加えて、既感染のウイルスによる発症リスクやHPV感染を伴わない子宮頸がんについても効果がある点で、HPVワクチンよりもはるかに広い範囲に効果がある。検診に伴う身体的侵襲は軽微であり、副作用等の健康被害が生じる危険性も低い。そもそも、HPVワクチン接種は子宮頸がん検診に置きかわるものではなく、HPVワクチンの接種を受けても子宮頸がん定期検診を受ける必要がある(ファクトシート追加編30頁参照)。
この点、ファクトシート追加編では、検診の感度・特異度を高める「より効率的な検診手法が追求されるべきこと」に加えて、「高い受診率の確保」という課題があるとされ、受診率が高いほど罹患率や死亡率の減少効果が高いことが示されているところ、受診率が「わが国では20%程度に留まっている」ことが指摘されていた(ファクトシート追加編16頁)。
しかし、9価ワクチンファクトシートには、従来のファクトシート発表以降における検診を巡る状況の変化が、ほとんど反映されていない。
ファクトシート2010年版公表以降、塗抹細胞診(従来法)に加え、より不適切検体割合の少ない液状検体法が広く普及した。細胞診は、感度約80%と精度が高い検査方法であり[3]、浸潤がん罹患率減少効果の確実なエビデンスが認められている。
HPV検査についてみると、HPV検査単独法は感度95.7%、特異度93.9%、陽性的中度21.8%、陰性的中度99.9%であり、併用検診では感度と陰性的中度がいずれも100%となる[4]。感度と陰性的中度が100%ということは、真に陽性である被検者が全員陽性と診断され、検査で陰性となった被検者全員が真に陰性であることを意味するから、定期的に併用検診を受けることで、子宮頸がんの発症をほぼ100%防ぐことができる。実際に、島根県出雲市では、2007年度に併用検診導入後6年目には広汎子宮全摘例が0例となり、浸潤がんは検診未受診者の6例のみであったと報告されている[5]。
これを受けて、島根県では対策型検診として、2013年度には県内すべての市町村で併用検診を導入している[6]。徳島県でも県内市町村に対してHPV検査の実施を推奨しており[7]、また佐賀県では、県下全域で30~44歳までを対象に子宮頸がん検診の際のHPV検査を無料化した(2022年3月末日までの予定)[8]。他にも、茨城県水戸市や三重県四日市市といった様々な自治体が併用検診を導入している[9],[10]。
任意型検診を実施している多くの医療機関でも併用検診が導入されており、人間ドック等の機会に簡単に受診することができるようになっている。
なお、細胞診は子宮頸部を擦過して細胞を採取する検査方法であり、検診受診者に対するリスクや苦痛はほとんどない。HPV検査も、子宮頸部の擦過により採取した細胞を用いて行うから、細胞診と同様である。
2020年7月29日、国立がん研究センターは、「有効性評価に基づく子宮頸がん検診ガイドライン更新版」を公表し、HPV検査単独法と併用検診のいずれにも「浸潤がん罹患率減少効果のエビデンスがある」と指摘した[11]。
そして、HPV検査単独法は対策型検診・任意型検診としての実施を推奨し、併用検診も条件を満たした場合には対策型検診・任意型検診として実施できると評価するに至った。
現在、HPV検査に有用性及び必要性があることを前提に、最適な導入方法に関する研究が進んでおり(厚生労働科学研究「子宮頸がん検診における細胞診とHPV検査併用の有用性に関する研究」)、子宮頸がん検診は今後更に精度の高い、効果的なものになっていくことが見込まれる。
上述のようにファクトシート2010年版及びファクトシート追加編では、日本の子宮頸がん検診受診率は約20%であると指摘され、高い受診率の確保が課題とされていた。
この点、2019年国民生活基礎調査によれば、検診受診率は43.7%となっており[12]、これらのファクトシート作成時から大きく上昇している。
わが国では、これまでも、がん検診無料クーポンや検診手帳の配布といった受診率向上のための施策を講じ、一定の成果を出してきたが、イギリスのように高い受診率を確保している諸外国を参考にしながら、受診対象者の明確化や、将来的には組織型検診のような検診の実施体制の整備など、効果的な受診率向上のための方策を実施することによって、さらに検診受診率を向上させていく余地が十分にある[13]。
なお、9価HPVワクチン(シルガード9)の審査報告書別紙審査報告(1)には、「子宮頸癌の予防策の一環として、子宮頸癌検診が従来から行われているが、その受診率は約16%と報告されており(厚生労働省、平成29年度地域保健・健康増進事業報告の概況)」との記載がある(2頁)が、これは市区町村実施の検診のみの受診率である[14]。子宮頸がん検診は市区町村実施の検診のみならず、健康診断等でも受診の機会があるから、子宮頸がん検診の受診率を16%と評価するのは不適切である。
この点、国民生活基礎調査は、「健診(健康診断や健康診査)や人間ドックの受診状況」としており市区町村実施以外の検診も含む。国民生活基礎調査による子宮頸がん検診受診率の上昇は前述したとおりである。
検診は、子宮頸がんによる死亡率や罹患率を減少させる効果が既に実証されており、かつ、より副作用が少なく安全な方法である。
そして、近年ますます効率的な検診手法の開発等の取り組みが進められていると同時に、検診受診率も上昇しており、さらに向上させる余地もある。
さらに、HPVワクチンの接種を受けても子宮頸がん定期検診を受ける必要があることは変わらない。
後述するとおり、9価ワクチンファクトシートの費用対効果分析においては、9価ワクチン接種と検診強化を比較した場合、検診強化の方が費用対効果において優ること、検診受診率が向上した場合、9価HPVワクチン接種の費用対効果は、一般的な費用対効果の基準値である500〜600万円/QALYを大きく上回る不良なものとなることが示されている。
HPVワクチンによる子宮頸がん予防については、副反応被害を引き起こす危険がなく、かつ費用対効果に優る検診という予防手段があることを踏まえた検討がなされるべきである。
9価ワクチンファクトシート2.(2)①1)(31頁)では、「2価または4価HPVワクチンを接種後、6か月から6年フォローアップした第三相、及び8〜9年フォローアップした第二相の無作為化比較試験(26スタディ、約74,000人)の結果がメタ解析され、HPVワクチンの有効性について確度の高いエビデンスが示されている」と記載されている。
そもそもHPVワクチンは、臨床試験で、真のエンドポイントである子宮頸がんの予防効果が実証されていない。あくまでHPVの持続感染に起因する前がん病変(CIN)の発生を代替エンドポイントとして有効性の評価がされているにすぎない。
この点、CINの発生ないしその予防効果をもって有効性があると判断することは、以下に述べる理由から、信頼性が高い評価とはいえない。
すなわち、CINの発生を子宮頸がん予防についての有効性の代替評価に用いることは、CINと子宮頸がん発症との間に相当程度の相関性があることが前提となる。
しかし、まず、HPV感染については、90%以上の症例で2年以内には消失するとされており[15]、HPV感染から持続感染が成立し、持続感染したものの一部が異形成(前がん病変)を起こし、軽度異形成(CIN1)→中等度異形成(CIN2)→高度異形成(CIN3)を経て、がん化していくと考えられている[16]。そしてHPV感染から子宮頸がん発症に進展する率は0.15%と極めて限定的であると言われている[17]。このようにHPV感染から子宮頸がんの発症までには相当の隔たりがあり、相関性が科学的に確立されているとはいいがたい。
そして、CIN1(軽度異形成)がCIN2以上の高度な病変に進展する率は12~16%であり、大部分は自然消失する。とくに30歳未満の若年女性では進展することが少なくおよそ90%以上が消退するとされる[18]。また、CIN2については、CIN2から浸潤がんに至る累積(10年)発症率は1.2%にすぎず、CIN2であっても相当数が消退する[19],[20]。
このようにCINから子宮頸がん(浸潤がん)発症に至る率が低い以上、CINの発生は子宮頸がん発症を推定させるものではない。また、CINの相当数が自然に消退する以上、何らかの介入を行いCINの発生予防効果が認められたとしても、このCINの発生予防効果という指標が上記介入の効果であることを予測させるものともいえない。
とすれば、CINの発症ないしこれに対する予防効果により、子宮頸がんの予防効果を評価することもできない。
以上から、子宮頸部の前がん病変の発生率の低下が認められても、子宮頸がん予防効果が認められたといえない。
9価ワクチンファクトシートが言及するHPVワクチンの有効性は、前がん病変の発生率の低下をもって評価がされているにすぎないので、HPVワクチンの有効性(子宮頸がん予防効果)が認められたとはいえない。
また、HPVワクチンに前がん病変の予防効果が認められることを前提にしても、以下に説明するとおり、かかる効果は限定的かつ不確実なものである。
ア 長期間にわたる効果は不明であること
HPVは、感染すると長期に潜伏感染の状態となる。そのため、HPVワクチンで誘導される抗体は、常に生殖器粘膜に存在して、高い抗体価を保ち、女性が性活動を行う限り、生涯にわたって感染を防ぎ得るものでなければならない。
しかしながら、HPVワクチンで誘導される抗体価の維持される期間は不明で、10代で接種しても感染予防効果が何歳頃まで維持されるのかは分かっていない[21]。接種から20年、30年、40年後の30~50歳代になったときに、実際に血中の抗体価が維持されているのか、血中の抗体価と並行して粘膜上に抗体が染み出ているのかについては、データがなく、不明である[22]。
また、そもそも血中の抗体価がどの程度であれば、粘膜上に抗体が染み出してHPV感染を予防できるかは、分かっていない[23],[24]。
それゆえ、HPVワクチンの添付文書には、現在に至るまで「予防効果の持続期間は確立していない」、免疫原性について「抗体価と長期間にわたる感染の予防効果及び子宮頸癌とその前駆病変の予防効果との相関性については現時点では明確ではない」、「抗体価と本剤含有HPV型に関連する感染、病変及び疾患の予防効果との相関性については現時点では明確ではない」と記載されている[25],[26]。
イ 既感染者に対する予防効果・治療的効果がないこと
HPVワクチンは、ウイルス感染そのものを予防する設計で作られたワクチンである。HPVワクチンには、すでに感染しているHPVに対して発症を抑える効果はなく、既感染者に対する子宮頸がんの予防効果はない。
加えて、HPVワクチンは、既感染者に対して、ウイルスを排除する治療的効果もない[27]。Hildesheimらは、HPV16型、18型既感染女性に4価HPVワクチンを接種し、6カ月ないし12カ月後にHPV-DNAを調べた。同報告によれば、16/18型HPV-DNAの検出頻度は、ワクチン群とプラセボ群で差がなく、HPVワクチンにはウイルスを排除する効果がないことが示された[28]。
ウ 他のハイリスクHPVの感染増加の可能性(タイプ・リプレイスメント)
2価及び4価HPVワクチンにより、HPV16型及び18型感染が減少したとしても、入れ替わりに他のウイルス型の感染が増加し、16/18型感染が減少した部分を埋めてしまう現象(タイプ・リプレイスメント)が起きる可能性が指摘されている[29]。
また、新潟大学・榎本隆之教授を責任者とする研究グループが、2020年7月29日に発表した論文[30]では、HPV16/18型の感染率は減少したものの、ハイリスクHPV全体の感染率は減少していないことが示され、タイプ・リプレイスメントが起こっている可能性が示された。
以上のように、HPVワクチン接種によってHPV16/18型の感染率が減少しても、タイプ・リプレイスメントが起こる可能性が考えられ、子宮頸がん全体の予防につながらないことが示唆される。
かかる可能性は、9価HPVワクチンにおいても、念頭におく必要がある。
エ HPVワクチンの有効性が不確実であるとのRees論文の指摘
Rees(London医歯学部公衆衛生研究所世界公衆衛生センター)らは、2価及び4価HPVワクチンについて、研究時点で公表されていた子宮頸がん予防に関する第2相及び第3相の効能試験について詳細な評価を行った[31]。
その結果、Reesらは、①実施された試験が子宮頸がんの予防効果を測定できるようにデザインされていなかった、②試験ではCIN1を含む複合的代替評価項目が用いられたが、CIN1+に対する高い効力は必ずしも発生頻度がはるかに低いCIN3+への高い効力を意味せず、また、HPVワクチンがCIN3+を予防することを明確に結論付けるにはデータが乏しすぎる、③多くの国でワクチン接種プログラムの対象となる年齢の少女における効力は免疫反応レベルを測定する試験を用いて推測されてきたが、どのくらいの抗体値なら子宮頸がんやその前駆状態への保護効果があるといえるか、あるいは保護作用がどのくらい続くかについては不明である、④多くの試験で複数の検出力不足のサブグループ分析がなされており、偽陽性(false-positive)の結果を増やした可能性がある、等の問題がワクチンの効力についての不確実性をもたらしていると結論付けている。
オ 小括
以上のとおり、HPVワクチンの前がん病変予防効果は、限定的かつ不確実なものである。
以上より、9価ワクチンファクトシートが指摘するような前がん病変の予防効果をもって、HPVワクチンの有効性を評価することはできない。
9価ワクチンファクトシート2.(2)②(36~39頁)では、9価HPVワクチンの海外及び国内での臨床試験成績が示されている。
これらについては、上記の2価及び4価HPVワクチンと同じ指摘があてはまる。
すなわち、臨床試験で子宮頸がん予防効果が実証されているとはいえず、前がん病変の発生率の低下をもってHPVワクチンの有効性(子宮頸がん予防効果)が認められたといえないこと、長期間にわたる効果は不明であり、既感染者に対する予防効果・治療的効果がない等、前がん病変の予防効果が認められることを前提にしても、かかる効果は限定的なものである上に不確実なものであることを指摘できる。
したがって、9価HPVワクチンに有効性を認めることができないのは、2価及び4価ワクチンと同様である。
9価ワクチンファクトシート1.(2)①1)(12頁)では、「オーストラリア、北欧、北米などでは2007年ごろからHPVワクチンが順次導入された。これらの国ではワクチン接種世代において子宮頸部前がん病変の減少が一致して観察されており(20-23)、子宮頸がんの減少も観察され始めている(24-26)。」と記載され、子宮頸部前がん病変や子宮頸がんの減少がHPVワクチンの効果であるかのように述べられている。
(2)前がん病変の予防効果をもって有効性を認めることができないこと
HPVワクチンの有効性は、本来、子宮頸がんの予防効果が認められることによって評価されるべきものである。前記第2・1(2)のとおり、子宮頸部の前がん病変の発生率の低下が認められても、子宮頸がん予防効果が認められたといえない。
したがって、HPVワクチンが導入された諸外国で、ワクチン接種世代において子宮頸部前がん病変の減少が観察されているとしても、これらによってHPVワクチンの有効性が認められるものではない。
(3)HPVワクチンが子宮頸がんを減少させたとの効果を導けないこと
ア 子宮頸がんの減少が観察されたとする論文の問題点
また、9価ワクチンファクトシートが「子宮頸がんの減少も観察され始めている」として引用する各論文には、以下のような問題がある。
(ア)フィンランド研究報告の問題点
9価ワクチンファクトシート引用文献24(以下、「引用文献」としてその番号を示す場合、特に断らない限り、9価ワクチンファクトシートにおける引用文献である)はフィンランドにおける研究報告であり[32]、HPVワクチン接種群、非接種群を追跡調査して比較したものであるが、同報告には、次のような複数の問題点があり、子宮頸がん及びHPV関連がん全体に対する予防効果を実証するものではない。
第一に、本研究報告は、掲載雑誌の編集者に宛てた手紙という形を取って公表された速報記事であって、研究の信頼性を評価することはできない。
第二に、本研究では、非接種群の人数が接種群の約2倍となっている。したがって、接種群も非接種群と同程度の人数を追跡していた場合、接種群の発症数が多くなっていた可能性がある。
第三に、HPV関連がんについての結論は示されているが、子宮頸がん(浸潤がん)単独で見たときのワクチン効果については言及しておらず、子宮頸がん(浸潤がん)単独では有意な結果が出なかったことが疑われる。
第四に、本研究の接種群は全員がHPVワクチン臨床試験の被験者であった。他方、非接種群の88%は、第Ⅲ相試験の参加資格がない者である。非接種群は、接種群(臨床試験参加者)よりも子宮頸がんを発症しやすい背景や属性を有する者であった可能性がある。
第五に、本研究の平均追跡期間は、接種群6.89年、非接種群6.97年であった。しかし、子宮頸がんは、HPV感染から発症までに数十年かかることもあることに鑑みれば、数十年の追跡を経なければ、子宮頸がんに対する予防効果は確認できない。この点、MSD社も、「子宮頸癌は、HPV感染後、通常は10~30年後に発症するため、HPVワクチン接種による子宮頸癌の発生率への影響を見るためには一定の期間が必要である」と述べ(シルガード9審査報告書別紙審査報告(1)38頁)、9価ワクチンファクトシート2.(1)(30頁)でも「HPV感染から子宮頸がんの発症まで通常10年以上の時間がかかることから、HPVワクチン導入の効果が子宮頸がん患者の減少として人口レベルで認められるには、10年以上の期間が必要と考えられる」と述べている。
第六に、本研究は、HPVワクチンの製造販売企業から利益供与、資金援助等を受けており、中立性・客観性に疑問があるため、結果の信頼性については慎重に判断される必要がある。
(イ)米国の研究の限界
引用文献25の研究[33]は、米国における15〜34歳の女性の浸潤性子宮頸がんの4年間の平均罹患率をHPVワクチン導入前4年間(2003〜2006)とワクチン導入後のうち直近の4年間(2011〜2014)の間で比較し、ワクチン導入後においてはこれが低下したとするものである。
しかし、同研究は、単に一定の年齢層の群の子宮頸がんの罹患率を比較するにとどまるから、HPVワクチンではなく、他の要因によって罹患率が低下した可能性を排除できない。この間、米国では、HPV・DNA検査併用の子宮頸がん検診が勧奨されるなど、子宮頸がん検診の手法にも大きな変化が生じており、これが罹患率の減少をもたらした可能性は高い。
著者ら自身、同研究から(HPVワクチンにより罹患率が減少したとの)因果推論を得ることはできなかった旨自認している。
よって、同研究をもって、HPVワクチンによって米国の女性の子宮頸がんの罹患率が減少したと推論することはできない。また、子宮頸がんの好発年齢はもっと上の年代である。34歳までの女性に認められたとされる子宮頸がんの罹患率の減少が、これらの女性がさらに上の年代となったときに引き続き認められるのかは全く不明である。
(ウ)スウェーデンの研究の限界
引用文献26は、スウェーデンの研究チームが発表した論文[34]である。これによれば、2006年から2017年までに10~30歳になるスウェーデン内の女性を追跡調査した結果、年齢など条件の違いを調整した10万人当たりの子宮頸がんの発生数は、接種群で47人、非接種群で94人となるとされている。9価ワクチンファクトシート2.(3)③1)(39頁以下)では、同論文をHPVワクチン導入後の海外での人口レベルの効果として引用している。
上記のとおり、本研究は、女性が30歳になるまで、または、2017年まで追跡調査をしたものであり、若年層のみを対象にした研究である。
この点、HPV感染は90%以上の症例で2年以内には消失するとされており[35]、HPV感染から子宮頸がん発症に進展する率は0.15%と極めて限定的であると言われている[36]。このように、HPVに感染しても、ほとんどの場合は、がんになる前に自然に排除される。そして、シルガード9審査報告書別紙審査報告(1)38頁や9価ワクチンファクトシート2.(1)(30頁)で述べられているとおり、HPVが排除されることなく感染が持続した場合に、その一部が数年から数十年かけてがんになると考えられる。
そのため若年層での子宮頸がん罹患はそもそも多くなく、日本では30歳未満の子宮頸がん罹患は全年齢での罹患の約2%である(2017年罹患者数に基づく割合)[37]。
したがって、本研究の結果を前提としても、子宮頸がんの生涯罹患リスクを低下させられるかはいまだ不明としかいえない。
イ 子宮頸がんの減少が検診の効果と考えられること
上記の米国研究に対する評価において、子宮頸がん検診の手法に大きな変化が生じたことが子宮頸がん罹患率の減少をもたらした可能性が高いことを指摘した。
この点、9価ワクチンファクトシート1.(2)②(21頁)でも、「欧米諸国および韓国における子宮頸がん罹患率および死亡率の減少には、細胞診による子宮頸がん検診の普及が寄与している」と指摘さられている。
このように、海外で子宮頸がんの減少が観察されているとしても、それは検診普及の効果とも考え得る。
ウ 小括
以上からすると、北欧、北米などで子宮頸がんの減少が観察され始めているとしても、これがHPVワクチンの効果であるとはいえない。
(4)オーストラリアと英国ではワクチン接種世代で子宮頸がんが微増
また、以上のような報告・論文とは逆に、複数の国においては、HPVワクチンの接種によっても子宮頸がんの減少が認められないことが報告されている。
オーストラリアと英国は、HPVワクチンが早期に承認・導入され、接種率が高い国である。しかし、両国ともワクチン接種世代の子宮頸がんは減少していない。
オーストラリアでは、HPVワクチン接種を受けていないと考えられる50歳以上の高齢層の子宮頸がん発生率が低下し続けている一方で、ワクチン接種年代にあたる20~24歳、25~29歳及び30~34歳の年代においては、HPVワクチンの導入以降の子宮頸がん発生率が減少しておらず、横ばいかむしろ増加傾向にある[38]。
英国でも、50歳以上の高齢層の子宮頸がん発生率の低下とは対照的に、HPVワクチンのキャッチアップ接種の対象とされた世代である25~29歳の子宮頸がん発生率は、ワクチン導入から約10年経って増加した(2000年における10万人あたり子宮頸がん発生率が9.5例であるのに対し2017年は16.4例[39])。12~13歳の時点で接種対象とされた世代である20~24歳における発生率も減少してはおらず、むしろ微増となっている[40]。
Cancer Research UKも,「英国の子宮頸がん発生率は,2004〜06年における25〜29歳10万人あたり12.0例から,2015〜17年における同18.5例まで増加した」ことを公表し、HPVワクチン導入後の「10年にわたる前進の欠如」を指摘している[41],[42]。
以上のとおり、北欧、北米などで、ワクチン接種世代において子宮頸部前がん病変の減少が観察され、子宮頸がんの減少も観察され始めているとしても、これをもってHPVワクチンの効果と見ることはできない。
また、複数の国から、HPVワクチンの接種によっても子宮頸がんの減少が認められないとの報告がなされていることからすれば、HPVワクチン導入によって子宮頸がん予防効果が認められたということはできない。
9価ワクチンファクトシート2.(3)③2)(42~44頁)では、国内でHPVワクチンの有効性に関する論文(引用文献96~105)が発表されており、様々な指標において、概ね70〜90%の予防効果が認められている、ワクチン導入前後の世代の比較による人口レベルの導入の効果が認められている等とされている。
しかし、これらの各論文で認められたとされている効果は、HPV感染の予防効果やCINの予防効果にすぎない。前記第2・1(2)のとおり、HPV感染やCIN発生から子宮頸がんの発症までには相当の隔たりがあり、相関性が科学的に確立されているとはいいがたい。したがって、HPVワクチンが対象とする型のHPV感染の予防効果やCINの発生率の低下が認められたことをもって、HPVワクチンの子宮頸がん予防効果が認められたことにはならない。
また、子宮頸がんはHPV感染から発症までに数十年かかることがあり、CIN2から浸潤がんに至る累積(10年)発症率は1.2%にすぎず、CIN2であっても相当数が消退する。CIN1(軽度異形成)については、大部分は自然消失し、とくに30歳未満の若年女性ではおよそ90%以上が消退する。そうであるところ、いずれの研究も、若年女性を対象にした数年程度の観察の結果にすぎず、子宮頸がんの予防効果はおろかCINの予防効果を判定するにも全く不十分なものとしかいえない。
さらに、ワクチン接種の有無を自己申告に基づいて区分した研究では、接種群と非接種群を正しく区分できていない可能性も想定される。現に9価ワクチンファクトシートの引用文献105は、Yamaguchiらの報告[43]を引用して、ワクチン接種の有無を自己申告で区分した場合、公的記録で接種歴が確認された者の14.8%がワクチン接種を受けていないと申告し、同じく公的記録で接種歴が確認されなかった者の40.2%が接種を受けたと申告したことに言及している。
そのうえ、HPVワクチン接種群と非接種群との間に、HPVワクチン接種を除く要因についての同質性が担保されているかどうかも不明であって、両者の比較をもってHPVワクチンの効果を結論づけるのは早計である。
9価ワクチンファクトシートの引用文献96〜105には以上のような共通の問題点があり、これらによってHPVワクチンの有効性が示されたとはいえない。
これらの共通する問題点に加えて、上記各引用文献については、以下にするとおりの個別の問題点が認められる。
引用文献96[44]は、新潟県の子宮頸がん検診受診者を対象とした研究に基づき、2価HPVワクチン接種によってHPV16、18型感染の予防効果が認められるとしている。
しかし、その後に発表された同研究の登録データを用いた新潟大学・榎本隆之教授を責任者とする研究グループの論文[45]では、HPVワクチン接種世代においてHPV16型等の感染は減少したものの、その減少分以上に他のハイリスクHPV型感染が増加したことにより、ハイリスクHPV全体の感染率が接種前世代よりも増加していることが認められており、ハイリスクHPV型間のタイプ・リプレイスメントの可能性が示唆される。
(3)秋田県の子宮頸がん検診受診女性の細胞診異常の検討について
引用文献97[46]では、秋田県の子宮頸がん検診を受診した20〜24歳の女性について、ASC-US以上の細胞診異常の発生頻度においてHPVワクチンの予防効果が認められたとされる。
しかし、文献97に記載されている表1~3を比較すると、HPVワクチン接種群のHSILの人数、すなわち「ASC-UC又はグレードが病変」の人数が不正確であることが窺われ、同文献の信用性には疑義がある。
また、表2によると、「細胞診異常の割合(%)の低下」の「88.1」の95%信頼区間は「0.322~0.979」とされており、信頼区間の幅が広く信頼性(精度・再現性)が高いとはいえない。
(4)宮城県での子宮頸がん検診受診女性の細胞診異常の結果について
引用文献98[47]において、宮城県で子宮頸がん検診を受診した20〜24歳の女性のHSIL以上の細胞診異常について、HPVワクチン接種の予防効果が示されたとされる。
しかし、同研究では組織学的異常も検討されているが、CIN3+の割合がワクチン接種群0%、非接種群0.18%であるとして、CIN3+の減少率は100%と記述されているものの、有意差は認められていない(P=0.3724)。
9価ワクチンファクトシートでは、引用文献100[48](文献99[49]の研究のアップデート)において、CIN2以上に対して76%の予防効果が報告されたと記載されているが、76%とあるのは、67%の誤記である。
引用文献101[50]は、秋田県の18〜24歳の女性において、ワクチン導入前の群と比較して、ワクチン導入後の群でHPV16、18型陽性率が低下していることが報告されている。
しかし、同報告は、何らかの産婦人科系の異常があって産婦人科を受診した女性を対象とした研究報告であり、研究対象の集団が本邦の全ての女性の集団と同質であるかは不明である。
また、同報告では、子宮頸部病変を有する集団におけるHPV16、18型陽性率の減少が見られているものの、子宮頸部病変の数自体は減少しておらず、むしろ増加しているものもある(同文献の表4)。これは、ある集団でワクチン導入後にHPV16、18型陽性率の低下が見られたとしても、そのことがその集団の子宮頸部病変全体の減少には必ずしも結びついていないことを示している。
以上のとおり、引用文献96~105に示されたいずれの研究をもってしても、HPVワクチンによる子宮頸がん予防効果は示されたとは言えない。
9価HPVワクチンの基本的な成分と設計は、2価及び4価HPVワクチンと同様である。そして既に2価及び4価HPVワクチンについては副反応に関する情報が集積されているのであるから、9価ワクチンファクトシートを作成するにあたっては、2価及び4価HPVワクチンの危険性を示すこれらの情報をも網羅的に収集・検討し、その結果を反映すべきであった。
とりわけ、実際に2価及び4価HPVワクチンによる重篤な副反応被害に苦しむ患者を診察してきた医師らによる多数の研究成果は、収集・検討が必須の情報であり、特に日本人の患者を精力的に診療してきた日本の研究者による多数の研究報告を精査することなくして、日本におけるHPVワクチンの安全性を確認することは不可能である。
当弁護団は、このことを2021年1月22日付「HPVワクチンファクトシート作成に関する意見書」で指摘し、日本人の患者を診察してきた日本の研究者らによる研究報告のうち、最低限検討すべき11通の研究報告を具体的に指摘した(前記意見書18〜19頁。同意見書における引用文献32~39、42、45、62)。
しかし、9価ワクチンファクトシートでは、国内における副反応被害状況に関する記述がわずか12行に留まり(47頁)、前記意見書で引用しているワクチン接種後の症状等に関する研究報告への言及がほとんどない。国内のHPVワクチン接種後の有害事象に関する報告として同ファクトシートが挙げている報告(引用文献126~130)中、前記意見書で挙げたものは127の1つのみであり、当弁護団が最低限検討が必要と指摘した研究報告のほとんどが引用すらされていない。同ファクトシートには、前記意見書で最低限検討すべきとした論文の著者らの別の4つの研究報告挙げられているが(123、126、128、129)、これらは、前記著者らの多数ある研究報告のごく一部にすぎない。
このように、9価ワクチンファクトシートは、HPVワクチン接種後に発現している症状に関する多数の研究報告(とりわけ国内で実際に副反応被害者を診察してきた医師らによる研究報告)を軽視するものとなっており、危険性を示す情報への言及は極めて不十分である。
また、9価ワクチンファクトシートは、「多様な症状については自己免疫反応や機能性身体症状との関与が考察されていたところ(126-130)、多様な症状については厚生科学審議会 予防接種・ワクチン分科会 副反応検討部会において、機能性身体症状と整理された」と記載するのみで、自己免疫反応の関与を示唆する論文126~130について、何らの考察を加えていない。
そもそも、前記引用文献のうち126~129はいずれも、上記副反応検討部会より後に公表された論文であるから、多様な症状を機能性身体症状とした上記副反応検討部会の整理が、これらの論文を踏まえて行われたかのように述べることは誤りである。
当然ながら、9価ワクチンファクトシート作成にあたっては、上記副反応部会後に新たに公表されたこれらの論文について、具体的に検討すべきであった。これを怠ったまま、漫然と、過去の副反応検討部会での整理結果を記載することは、最新の情報を収集してワクチンの安全性を検討するための資料を提供するというファクトシート作成にあたって課せられた役割を放棄するものである。
危険性を示す情報に関し、この程度の検討しか行わずに作成された9価ワクチンファクトシートでは、9価HPVワクチンの安全性はおよそ確認できない。
以上述べたように、9価ワクチンファクトシートの安全性に関する記載は著しく不十分であり、以下に説明するとおりの2価及び4価ワクチンの危険性に関する情報を踏まえて、9価HPVワクチンの安全性が評価されるべきである。
9価ワクチンファクトシートでは、9価HPVワクチンの安全性について、臨床試験結果や承認後の有害事象報告の状況について挙げているが、2価及び4価のHPVワクチンで観察されている、多様な症状が1人の患者に重層的に発現するという共通した特徴をもつ副反応症状を捉えるものになっていない。また、2価及び4価HPVワクチンとこれらの多様な症状との因果関係を示す知見を適切に反映していない。
そこで、本項では、まず、危険性に関する情報が集積されている2価及び4価HPVワクチンに関する知見を指摘する。すなわち、接種後に認められる副反応症状に共通した特徴があること、およびHPVワクチン接種とこれらの症状との因果関係を示す報告があることを(1)ないし(3)で指摘する。次に、その危険性の程度が他のワクチンと比較しても高いことを(4)で示す。そして、(5)および(6)において、HPVワクチンは安全であるとするWHOなどの国際機関や各国規制当局の見解の問題点について述べる。
9価ワクチンファクトシート作成に当たっては、少なくともこれらの点を精査するべきであった。
9価ワクチンファクトシートでは、2価及び4価HPVワクチンの副反応症例に関し、国内研究者らのいくつかの研究が挙げられているものの(引用文献123、126、127、129)、その内容に対する具体的な言及はない。
しかし、HPVワクチン接種後の副反応の特徴を把握することは極めて重要であるので、以下、副反応症例の病態の特徴について述べる。
2価及び4価HPVワクチンについては、これらの接種後に副反応症状を呈した患者を診察した国内の医師らによって、副反応症状の特徴や他覚的検査所見に関する報告がなされている[51],[52],[53],[54],[55],[56],[57],[58]。
これらの報告によれば、副反応症例に共通する病態の特徴は、①体位性低血圧、体温調節不良、月経異常、過呼吸、めまいなどの自律神経・内分泌障害、②学習障害、記憶障害、見当識障害、倦怠感などの認知・情動系障害、③視覚障害、聴覚過敏、頭痛、関節痛、筋肉痛、しびれなどの感覚系障害、④脱力、筋力低下、歩行障害などの運動系障害など、多様な症状が1人の患者に重層的に発現し、既存の定義づけられた疾患では捉えきれないという点にある。
そして、患者らの中には、脳血流量の低下、内分泌機能検査の異常、起立試験の異常、表皮内神経線維密度の低下、髄液中の自己抗体の検出など症状と関連すると思われる他覚的所見を有する者も少なくないことが報告されている。
患者らの中には、自己免疫疾患の治療に有効とされる免疫吸着療法により改善がみられる例が報告され、副反応に自己免疫が関与している可能性が指摘されている。
以上のようなHPVワクチン接種後の副反応症状の特徴は、海外でも同様である。このことは、海外の被害者自身から症状の共通性が報告されているだけではなく[59]、海外の研究者らによる同様の研究結果からも明らかとされている[60],[61],[62],[63]。また、男子にHPVワクチンを接種している国では男子にも共通の症状が認められている[64]。
(2)動物実験を含め、HPVワクチンの成分の危険性を示す各種報告
当弁護団の前記意見書では、HPVワクチン成分が危険性をもたらす性質を有していることを指摘したが、この点に関しての言及は、9価ワクチンファクトシートにはない。4価HPVワクチンについての荒谷らの研究が挙げられているものの(引用文献128)、その内容に対する具体的な言及はない。
しかし、副反応の発現を検討するにあたり、ワクチン成分に関する情報は不可欠であるから、以下、述べる。
2価、4価、9価HPVワクチンには、HPVのL1タンパクとアルミニウム・アジュバントが含まれている。
これらについては、以下の報告がある。
① L1蛋白には人の生体成分と分子相同性があり[65],[66]、交差反応による自己免疫を引きおこしうること[67],[68],[69]
② L1蛋白からなるウイルス様粒子は樹状細胞を強く活性化すること[70]
③ 添加されているアルミニウム・アジュバントは、免疫を活性化する一方[71],[72]、神経障害を引き起こすこと[73],[74],[75],[76]
④ アルミニウム・アジュバントの有害性が動物実験で示されたこと[77],[78]
⑤ ガーダシルをマウスに投与した実験において、荒谷らは、マウスに運動機能障害を引き起こし、マウスの脳の視床下部周辺の血管内皮細胞のアポトーシスを誘発したこと[79]を、Inbarらは、マウスの行動試験での異常、自己免疫の発生、脳組織染色による神経炎症反応の出現を、それぞれ観察したこと[80]
2価及び4価HPVワクチンについて、信州大学の池田修一医師らや、鹿児島大学の髙嶋博医師らにより、接種者の増加数と副反応症状により所属の医療機関を受診した患者の発生数の推移の連動があり、積極勧奨中止後は副反応症状を訴える新規患者がほとんど出現していないといった時間的相関が認められる旨の報告がなされている[81],[82],[83]。これはHPVワクチンと副反応との因果関係を示すものとして重要である。
9価ワクチンファクトシートでは、これらの研究報告についての言及はなく、危険性に関する情報の検討が不十分である。
2価及び4価HPVワクチンのPMDAへの副反応疑い報告は、販売開始から2021年3月31日までで合計3304例(うち重篤症例1903例)である[84]。
別紙7「副反応報告頻度の比較」は、重篤な副反応(有害事象)報告の頻度を、他の定期接種ワクチンと比較したものである。HPVワクチンの報告頻度は、例えば、麻しん・風しん混合ワクチンと比較すると約13.2倍であり、主な定期接種ワクチンの合計と比較すると、主な定期接種ワクチンの合計が100万回接種当たり約23.4人であるのに対し、HPVワクチンは約204.8人であり、前者の約8.8倍にも及ぶ。
また、別紙8「副作用被害救済(障害・死亡)認定頻度の比較」は被害救済制度での障害・死亡の認定頻度を比較したものである。HPVワクチンの認定頻度は、例えば、麻しん・風しん混合ワクチンと比較すると約21.8倍、主な定期接種ワクチンの平均と比較すると、その認定頻度は100万人あたり約0.89人であるのに対し、HPVワクチンの認定頻度は約13.72人であり、前者の約15.4倍にも及ぶ。
このような定期接種ワクチンとの比較からも、HPVワクチンには高い危険性が認められる。
しかし、従来のファクトシートでも、9価ワクチンファクトシートでも、上記のような検討はされておらず、危険性についての検討は不十分である。
ア 祖父江班調査
9価ワクチンファクトシートは、祖父江班調査(引用文献121)を引用して、HPVワクチン接種歴のない者においても、HPVワクチン接種後に報告されている症状と同様の「多様な症状」を有する者が、一定数存在したと述べる(同ファクトシート47頁)。
しかし、疫学調査においては、観察の対象である疾病を、診断基準を設けて明確に定義づけることが必須とされているが、祖父江班調査では、調査対象疾患である本件副反応が適切に定義づけられておらず、本件副反応と同様とされる「多様な症状」に該当するか否かの判断にあたり、何らの診断基準も設けずに、個々の主治医の判断でなされた診断名に基づいて判断しているという問題があり、祖父江班調査にいう「多様な症状」は本件副反応と一致しない。したがって、この調査をもって、「HPVワクチン接種歴のない者においても、HPVワクチン接種後に報告されている症状と同様の『多様な症状』を呈する者が一定数存在した」との結論をとることもできない。
なお、研究代表者である祖父江信孝氏自身も、この調査では本件副反応と「多様な症状」の同質性は分からないことを認めている[85]。
一方、祖父江班調査では、「多様な症状」があるとされた女子の個別症状の割合において、接種歴あり群の方が有症率が全体的に高く、特に副反応患者に特徴的なものとして指摘されている症状において接種歴あり群の方が著しく高い有症率を示しており(別紙9「祖父江班調査個別症状グラフ」)、むしろ、それらの症状とワクチン接種との因果関係を示唆する結果となっている。
イ 名古屋市調査
9価ワクチンファクトシートは、名古屋市調査についての鈴木論文を引用して、「HPV接種後に現れるとされる24症状の関連を評価した疫学研究において、24項目の症状の出現はHPVワクチン被接種者と未接種者で同様であった」と述べる(引用文献122)(同ファクトシート47頁)。
しかし、名古屋市調査では、個々の症状についての調査しか行われていない。本件副反応の個々の症状は、同年代の女性の多くが経験するものも少なくないが、本件副反応は、これらの症状が1人の患者に重層的に現れるという特徴がある。個々の症状の調査では、こうした特徴を有する疾患としての本件副反応を検出することはできないから、名古屋市調査をもって本件副反応の因果関係を判断することはできない。
次に、名古屋市調査に関する鈴木貞夫氏(名古屋市立大学教授)の解析[86]では、ロジスティック回帰分析という解析モデルを用いて年齢調整が行われているが、この解析モデルでは、①年齢と症状経験割合との間に線形性の関連があること、②年齢の症状経験への影響が比較する2群(接種群と非接種群)の間で類似していること、③ワクチン接種の有無と年齢との間に有意な交互作用がないことという前提条件を満たすことが求められる。しかし、公開されている名古屋市調査のデータを用いた他の研究者による解析[87],[88]、及び当弁護団による解析[89]によれば、名古屋市調査のデータは①~③のいずれの条件も満たしておらず、誤った方法による年齢調整をしているという初歩的かつ致命的欠陥がある。
また、他の研究者の解析からは、名古屋市調査の回答結果は健康者接種バイアス(もともと健康状態が悪い人ほど接種を回避するため、非接種群に健康状態の悪い人が多くなるという偏り)の影響を強く受けていることが推測される。この健康者接種バイアスの影響については鈴木氏も認めている。
したがって、鈴木氏による解析は、健康者接種バイアスの影響によって偏りのあるデータに対して、さらに誤った方法による年齢調整を行っているものであるから、これをもって、「HPVワクチンと報告されている24症状の発症との間に有意な関連性はない」と結論することはできない。
他方で、健康者接種バイアスを考慮した層別解析や、交互作用を考慮した方法による解析では、HPVワクチンの副反応を特徴づける一部の症状でオッズ比が有意に1を上回っており、それらの症状とワクチン接種との因果関係を示唆する結果となっている。
ウ 海外の疫学研究
海外の疫学研究は、①人数規模が少ないこと、②アルミニウム・アジュバント含有薬を対照群としているものがほとんどであること、③既存の疾患の有無を観察しており、本件副反応の特徴を捉えるデザインとなっていないなどの共通する問題がある。
調査人数の比較的多いフィンランド研究においても、既存の疾患の有無を観察しており、本件副反応の特徴を捉えるデザインとなっていない点において同様の根本的な問題がある。
従って、これらの結果は、因果関係を否定する理由にはならない。
(6)安全性が確認されたとするWHOや各国規制当局等の見解の問題性
ア WHO・各国規制当局
9価ワクチンファクトシートでは、これらの機関の「優れた安全性を有している」とか、「HPVワクチン接種とCRPSおよびPOTSの発症との関連についての評価を行い、因果関係を示唆する知見は得られなかった」との結論のみが記載されている(47頁)。
しかし、その見解の根拠となった臨床試験、有害事象報告、疫学調査には、前記で述べたとおり問題がある。
世界保健機関(WHO)や各国規制当局は、HPVワクチンの安全性を確認した旨の見解を発表している。その根拠とされているものは、臨床試験データ、疫学調査研究、市販後安全監視システムによって得られたデータである。
しかし、臨床試験や疫学研究は、HPVワクチンの副反応の臨床症状の特徴を捉えたものになっていないという問題点がある。すなわち、臨床試験や疫学研究では、既存の定義づけられた自己免疫疾患やCRPS、POTSなどの症候群のリスク増加を調べている。これに対し、HPVワクチンの副反応の特徴は、感覚系障害、運動系障害、認知・情動系障害、自律神経・内分泌系障害等、多様な症状が1人の患者に重層的にあらわれるという点にあり、このような特徴をもった臨床症状は、既存の定義づけられた疾患では説明できない。
臨床試験については、Lars Jørgensenらの研究[90]で、臨床研究報告のデータを統合したメタ解析による結果に基づき、対照薬にアルミニウム・アジュバント含有薬が投与されていること、有害事象報告が適切に行われていないこと、免疫・神経障害の既往症のない被験者のみを試験に組み入れている臨床試験が多いといった問題点が指摘されている。
また、各国の規制当局が採用している市販後安全監視システムにも限界がある。
現行の標準的な医薬品安全性監視は、米国のVAERS(ワクチン有害事象報告システム)などの大規模なデータベースを用い、市販後の有害事象報告や文献の症例報告から統計的手法によってシグナルを検出して仮説をたて統計的な手法によって検証するという手順で行われているが、この手順のいずれの段階においても、標準的な症例定義を利用している。そのため、HPVワクチンの場合のように、対象とする副反応症状が複合的で、中に非特異的な症状が含まれている場合や、副反応症状の定義について、臨床上のコンセンサスが形成されるに至っていない場合などには、現行の安全性監視システムは十分に機能しない。また、人口ベースのリスク推測しか提供せず、遺伝的な差があるワクチンへの反応については、疫学的検出をくぐり抜けてしまうことがある[91]。一方、新しいアプローチであるクラスター解析では、一部の症状の組み合わせにおいて統計的な有意差が示されている[92]。
要するに、WHOや各国規制当局などが行ってきた安全監視方法では、HPVワクチンの安全性は確認できない。
これに加え、WHOは、その収入源の多くが任意の寄付に寄っており、HPVワクチンを製造する企業やワクチン普及活動を行う民間機関から多額の寄付を受けている。さらに、WHOのワクチンの安全性に関する諮問委員会(GACVS)の委員にはワクチン製造企業等から資金援助を受けて研究を行っている委員が複数おり、またGACVSの審議にはワクチンの製造企業関係者が参加しているなど、利益相反関係があり、見解の信頼性に疑問がある。合同会議のメンバーが参加して行われた厚生労働省の意見交換会にGACVSがHPVワクチンを推進する目的で不当な介入をしたことも明らかになっている。
イ コクラン・レビュー
9価ワクチンファクトシートは、2価及び4価HPVワクチンの安全性に関し、コクランによるシステマティック・レビューを挙げている。
しかし、このコクラン・レビューの対象となった臨床試験のほとんどで、アルミニウム・アジュバント含有薬が対照として使われていたという問題がある[93]。
アルミニウム・アジュバントは免疫反応を増強するもので、これを含むものを対照とすることは、プラセボの定義に該当せず、HPVワクチンの危険性を過小評価することになりかねない[94]。
さらにコクラン・レビューは、科学雑誌に公表された臨床試験論文を対象に分析を行っているが、公刊雑誌で発表されている有害事象数は実際より少なく報告されているという問題もあった[95]。
したがって、コクラン・レビューに依拠してHPVワクチンの安全性が確認されたということには問題がある。
ウ 厚生労働省の審議会(合同会議)
厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会及び薬事・食品衛生審議会医薬品等安全対策部会安全対策調査会の合同会議(以下「合同会議」という)は、接種後1カ月以上経過した後の症例について接種との因果関係を否定し、接種直後の症状についてワクチン接種の痛みと痛みに対する恐怖心が惹起する機能性身体症状(心身の反応)であるとし、9価ファクトシートにおいても、この合同会議における結論が引用されている(47頁)。
しかし、この合同会議の結論は、神経学的疾患、中毒、免疫反応、心身の反応という4項目の仮説を立て消去法で導かれたものであり、根拠に乏しいものである。
また、その後の合同会議においても、前述のとおり問題のある国際機関や各国規制当局の見解を鵜呑みにし、副反応患者を多数診察したうえでHPVワクチンの危険性を指摘する前記の各研究報告の進展を踏まえた適切な検討を行っていない。
さらに、そもそも合同会議の審議の基礎資料に問題がある。合同会議の主たる資料は、自発報告である副反応報告について一定期間の報告数や報告概要をまとめた一覧表であり、症状経過などの個別資料が提出されるのは死亡ないし重症症例とされた報告例のみである。そのため、2020年1月に当弁護団が重い症状に苦しむ全国の原告131人(当時)と照合した結果では、重症症例として個別資料が合同会議に提出されていたのはわずか19人である。重症症例扱いされていない112人の原告には、法律に基づいて障害認定を受けた原告が少なくとも36人が含まれているが、これは吟味されていない。なお、17人は、そもそも副反応報告すらされていない[96]。
したがって、合同会議の審議によりHPVワクチンの安全性が確認されたということはできない。
9価HPVワクチンは、L1蛋白とアルミニウム・アジュバントを基本的な成分としている点で2価及び4価HPVワクチンと同様の性質を有している。したがって、9価HPVワクチンには2価及び4価HPVワクチンと同様の免疫介在性の神経障害を生じる潜在的な危険性があると考えられる。
しかも、9価HPVワクチンには、L1蛋白とアジュバントがそれぞれ4価HPVワクチンの2倍量含まれているから、4価HPVワクチンより危険性が高い可能性がある。実際、9価HPVワクチンの臨床試験においては、重篤な副反応が4価HPVワクチンの約2倍報告されている[97],[98],[99]。しかし、9価ワクチンファクトシートでは、これらの報告についての記載がなく、検討が不十分である。
なお、9価ファクトシートは、米国における有害事象報告に関し「9価HPVワクチンを接種した18〜26歳女性で失神を起こす頻度が他のワクチンを接種した同年代の女性よりも高かった」ことには言及している(46頁。引用文献117)。
既に述べたように、2価及び4価HPVワクチンについては、他の定期接種ワクチンとの比較で危険性が示されており、9価HPVワクチンの場合には、その危険性がさらに高いものとなる可能性がある。
現在、9価HPVワクチンの安全性の根拠とされているものは、臨床試験データと疫学調査研究であるが、既に述べたように、臨床試験や疫学研究は、9価HPVワクチンを含むHPVワクチンの副反応の臨床症状の特徴を捉えたものになっていないうえ、安全監視システムに限界があり、安全性が確認されたとはいえない。
HPVワクチンの危険性については前項で論じたとおりであるが、ワクチンの接種を広く促進すべきか否かを判断するにあたっては、その副反応の重篤性に加えて、副反応症状に対応する医療体制等が整っているか否かといった社会的条件も重要な要素となる。
しかるに、9価ワクチンファクトシートは、副反応に対する治療・相談体制、救済に関し、全く言及していない。
2価及び4価HPVワクチンの接種後の副反応について、治癒が期待できる治療法は確立していない。基本的に行われているのは対症療法のみであり、その効果には限界がある。機能性身体症状であるとする立場では認知行動療法が行われ、その研究方法が前記合同部会に提出されているが、脱落者が多く適切に評価できる状態にない。
国の指示によって各都道府県には少なくとも1つの協力医療機関が選定されているが、患者からは、その協力医療機関の医師に詐病扱いされたといった訴えが後を絶たない。HPVワクチンによって多様な副反応症状が生じることを認めていない医師や、そもそも自己の医療機関が協力医療機関に指定されていることを知らない医師などが診療に当たっているという現状も報告されている[100]。
日本医師会と日本医学会は2015年に「HPVワクチン接種後に生じた症状に対する診療の手引き」を公表し、「様々な部位の持続的な痛み、倦怠感、運動障害、記憶など認知機能の異常、その他の体調の変化等の症状を問診し、それぞれについて、その性状と程度、経過、生活上の支障、薬物療法など治療に対する反応を丁寧に聴取する」等としているが[101]、この指針が一般的な医療機関で活用されているという状況にはない。
そのため、慢性化した副反応症状に苦しむ患者は一部の信頼できる医療機関に集中し、遠方から通っているという現状にある。
病態についてのコンセンサスや診断基準が確立されていないため救済申請について医師の協力が得にくく、また申請しても、情報不足等を理由とした「判定不能」として救済されない例が多数ある。
また、複雑な病態で治療法が確立していないために、障害認定を受けるには至らない場合においても、通学や就労が相当程度制限される例が多いのが実情であるが、このような被害者は、現行の救済制度の枠組みでは適切な救済を受けることができない。
既に述べたように、HPVワクチンにおいては、他のワクチンに比較しても高い頻度で重篤な副反応が発生するが、誰に発症するかは分からず、ひとたび副反応を生じた場合には、治療と救済が極めて不十分であるのが現状である。また、接種対象者の年齢が中高生であるため、進路に与える影響なども深刻で、進学のみならず、就労にも影響を与えている[102]。また、看護のために家族の生活にも影響を及ぼしている。
さらに、複雑な症状であるがために周囲の理解を得にくいうえ、副反応被害者の多くは他の定期接種ワクチンをほとんど接種しているにもかかわらず、一部のHPVワクチン推進論者から「反ワクチン」といったレッテルを貼られ、被害者の訴えが子宮頸がんの増加を招き社会に害をなすかのように批判されている現状にあり、副反応被害者は、副反応症状だけでは語り尽くせない苦痛を強いられている。
シルガード9審査報告書別紙審査報告(1)37頁以下の別添「HPVワクチンの臨床的位置づけについて」には、HPVワクチン接種後に生じた症状に対する報告体制と診療・相談体制が整備され、健康被害を受けたHPVワクチン被接種者に対する救済等の対策が講じられたと記載されている。しかし、その実情はこれまで述べたとおりであり、副反応被害者らの置かれている状況は極めて深刻なものであるにもかかわらず、これに見合う治療や救済は提供できていないのが現状である。
副反応に対する治療・相談体制や救済制度の実態は、ワクチンの接種を広く推進すべきか否かの判断にあたって極めて重要となるファクトである。しかるに、9価ワクチンファクトシートはこれらの点に言及しておらず、必要な事項を欠く不十分なものである。
ワクチンが予防接種法上の定期接種(5条1項)に位置付けられると、A類疾病等については接種勧奨(8条1項・2項)の対象となり、対象者等に接種の努力義務(9条1項・2項)が課されるうえ、ワクチン接種に対して公費が投入されることとなる(25条ないし27条)。そのため、それに見合うだけの費用対効果が得られるのかという医療経済的な評価は、定期接種に位置付けるか否かを判断する上で重要な事項である。
前述のとおり、HPVワクチンには子宮頸がんそのものを防止する効果は証明されていないし、前がん病変の予防効果は限定的かつ不確実であり、HPVワクチンで誘導される抗体価が維持される期間も不明とされている。
9価ワクチンファクトシートにおいては、効果持続期間のベースライン推計を10年間持続・その後5年間でゼロと設定し、持続期間を10年から30年まで変動させた分析を行っている。このような推計は、その効果が生涯にわたって続くことを前提としたファクトシート追加編における分析に比較すれば改善されたものといえるが、いずれにせよ、異形成を防止する効果しか証明されておらず、効果持続期間も不明であることを踏まえると、やはり適切な推計とはいえないものである。
9価ワクチンファクトシートの費用対効果の評価においては、費用推計の中に副反応に対する対策費用等は含まれていない。
本意見書第4で述べたとおり、副反応被害のほとんどは、HPVワクチン接種当時中学校または高校に通っていた10代の少女らに生じている。少女らは副反応の症状により就学状況が悪化する等、将来設計にも大きな影響を受けているのであり、本来であれば、単に「費用」として推計してしまうことさえ不適切なものというべきである。
仮に、副反応被害を「費用」として推計するのであれば、そこには、医薬品医療機器総合機構(PMDA)からの給付は当然に含まれる。また、前述のとおり、副反応に対する治療法は確立しておらず、治療体制も整っていない。適切な治療を受けるために遠方の病院で受診せざるを得ない患者もいるのが現状である。治療にかかる費用を莫大なものとなり、正確に推計するのは困難である。
より本質的な問題は、副反応被害者に後遺障害が残ったことによる逸失利益や、その家族の付添・看護に伴う損失等も甚大であるということであり、いわゆる「社会の立場」からの費用対効果分析も行われる必要がある[103]。
いずれにせよ、9価ワクチンファクトシートの費用対効果の評価には、9価HPVワクチン接種を選択した場合に必要となる費用のごく一部しか計上されていないことに留意すべきである。
さらにいえば、費用対効果が良好であるか否かの評価は、慎重になされなければならない。なぜならば、モデル分析にどのような数値を用いるかの選択によって、結論が真逆になりうるからである。
一例をあげれば、ファクトシート追加編においては、4価HPVワクチンの増分費用効果比(ICER)は201.1万円/QALYとされていたのに対し、9価ワクチンファクトシートにおいては、同712万2586円/QALYとされた。一般的な費用対効果の基準値(閾値)は500〜600万円であり、前者の分析では費用対効果良好、後者の分析では費用対効果不良という結論となっている。
この推計に用いられた数値について、効果項目では、前者の獲得QALYが0.02QALY(接種あり29.54QALY-接種なし29.52QALY)であるのに対し、後者の獲得QALYが0.0065QALY(接種あり38.9578QALY-接種なし38.9513QALY)となっている。前者に比べて後者の獲得QALYが減少している理由のひとつとしては、ワクチン効果持続期間の推計の違い(前者は生涯持続と仮定、後者は10年間持続・その後5年間でゼロと仮定)が想定される。もっとも、それだけでは、後者の方が、接種なしのQALYが大きくなっていることを説明できない。結局のところ、ファクトシート追加編と9価ワクチンファクトシートとで、なぜ4価HPVワクチンについて費用対効果の結論が変わったのかは、公表されていないものも含め、モデル分析に用いられた全ての数値を検証しなければ、分からない。
このように、費用対効果の推計は、モデル分析にどのような数値を用いるかの選択によって、結論が真逆になりうる。費用対効果が良好か否かを評価するにあたっては、そこで用いられている数値の妥当性まで慎重に判断されなければならず、結論のみを安易に取り上げることがないようにしなければならない。
医薬品の有用性判断においてより安全な代替手段があるかどうかが重要であるのと同様に、定期接種化という医療政策判断においてより費用対効果に優れた代替手段があるかどうかは重要である。
9価ワクチンファクトシートにおいては、検診の受診率が80%まで向上したケース(検診強化)についても、仮定した計算が行われている(62頁)。これによれば、ワクチン効果持続期間を10年と仮定した場合、9価HPVワクチン接種を現状(接種なし・検診未強化)と比較した場合の増分費用効果比(ICER)は420万円/QALYであるのに対し、検診強化を現状(接種なし・検診未強化)と比較した場合の増分費用効果比(ICER)は175万円/QALYとされている(62頁・図25)。これによれば、9価HPVワクチン接種と検診強化のいずれかだけを実施する場合、検診強化の方が費用対効果に優れていることが分かる。また、検診強化に加えて9価HPVワクチン接種を実施する場合、検診強化のみの場合と比較すると、増分費用効果比(ICER)は1149万円/QALYとなり、閾値である500〜600万円を大きく上回る。このことは、検診受診率が向上した場合、9価HPVワクチン接種の費用対効果が大幅に不良となることを示している。
9価ワクチンファクトシートにおけるこれらの指摘は、定期接種化という医療政策の是非を判断する上で極めて重要である。
9価ワクチンファクトシートの費用対効果の部分においては、代表的な論文として、
① Konno R, Sasagawa T, Fukuda T, Van Kriekinge G, Demarteau N.(2010).Cost-effectiveness analysis of prophylactic cervical cancer vaccination in Japanese women. Int J Gynecol Cancer. 2010;20(3):385-92
② Yamamoto N, Mori R, Jacklin P, Osuga Y, Kawana K, Shibuya K, et al.(2012). Introducing HPV vaccine and scaling up screening procedures to prevent deaths from cervical cancer in Japan: a cost-effectiveness analysis. Bjog.2012;119(2):177-86.
③ Yamabe K, Singhal PK, Abe M, Dasbach EJ, Elbasha EH. (2013). The Cost-effectiveness Analysis of a Quadrivalent Human Papillomavirus Vaccine(6/11/16/18) for Females in Japan. Value Health Reg Issues. 2013;2(1):92-7.
④ Cody P, Tobe K, Abe M, Elbasha EH.(2012). Public health impact and cost effectiveness of routine and catch-up vaccination of girls and women with a nine-valent HPV vaccine in Japan. a model-based study. BMC Infect Dis. 2021;21(1):11
の4つの論文が引用された上で、詳細な分析が行われている。
ところが、これらの先行研究については、9価ワクチンファクトシートにおいても一部指摘されているとおり、利益相反関係が明らかとなっている。
論文①については、当該研究がグラクソ・スミスクライン社の財政的援助によって実施されたものであることが記載されており、執筆者であるVan Kriekinge GとDemarteau Nは、グラクソ・スミスクライン・グループに属するグラクソ・スミスクライン・バイオロジカルズの社員である。
論文③については、MSD社の財政的援助によって実施されたものであることが記載されている。
論文④については、執筆者であるCody PとElbasha EHがメルク社の子会社であるMerck Sharp & Dohme社の社員であり、Tobe KとAbe MがMSD社の社員である。
定期接種化によって製薬企業にもたらされる利益は極めて大きい。それゆえ、定期接種化の是非を評価するにあたって重要な要素となる費用対効果の分析結果が、利益相反関係のある論文によって歪められるようなことは絶対に許されない。
9価ワクチンファクトシートにおいては、費用対効果分析の代表的な論文が引用された上で、詳細な検討が行われ、検診受診率向上の方が費用対効果として良好であることや、費用推計に副反応のデータが組み込まれておらずより精緻な分析が必要であることが指摘されている。
これらに加えて、効果推計において異形成の防止効果しか証明されておらず効果持続期間も不明であること、副反応被害についてはたんに「費用」と推計することも不適切なものであること等からすれば、9価HPVワクチンの定期接種化の議論にあたり、費用対効果について安易な評価がなされるべきではないことは明らかである。
ワクチンに関するファクトシートは、そのワクチンについて広く接種を促進することの是非を評価するために作成されるものである。そのためには、対象疾患の疫学的状況や、当該ワクチンの有効性、安全性(危険性)に関する情報が、漏れなく、適確に整理されていなければならない。
しかし、これまで述べてきたとおり、9価ワクチンファクトシートには不正確な部分が多々あり、特に、ワクチンの危険性に関する情報の評価は著しく不十分、不適切なものである。
このようなファクトシートに基づいて、9価HPVワクチンの定期接種化を検討することは許されない。
(2021年9月7日付一部修正版)
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[23] 国立感染症研究所・前掲注21・16頁
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[88] 設楽敏ら「『名古屋市子宮頸がん予防接種調査』データに潜むバイアスを探る」・第24回日本薬剤疫学会学術総会 プログラム抄録集・2018年
[89] HPVワクチン薬害訴訟全国弁護団「名古屋市調査に関する見解」 https://www.hpv-yakugai.net/app/download/8054335554/210122+nagoya-study.pdf
別紙報告書 https://www.hpv-yakugai.net/app/download/8054336154/210122+appendix.pdf
[90] Lars Jørgensenら「Benefits and harms of the human papillomavirus (HPV) vaccines: systematic review with meta-analyses of trial data from clinical study reports(ヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチンの有益性と有害性: 臨床研究報告に含まれる臨床試験データのメタ分析による系統的レビュー)」Systematic Reviews 9 Article 43・2020年2月28日
[91] Rebecca E Chandler「Modernising vaccine surveillance systems to improve detection of rare or poorly defined adverse events(稀なあるいは十分に定義づけられていない有害事象検出の改善のためにワクチン監視システムを改革する)」BMJ2019・2019年5月31日
[92] Rebecca E. Chandlerら「Current Safety Concerns with Human Papillomavirus Vaccine: A Cluster Analysis of Reports in VigiBase(ヒトパピローマウイルスワクチンの安全性に関する現在の懸念:VigiBase®収載報告のクラスター分析)」Drug Safety・2016年9月16日
[93] 薬害オンブズパースン会議「HPVワクチンに関するコクラン・レビューに対する批判的見解」2018年6月7日
[94] Peter Doshiら「Adjuvant-containing control arms in pivotal quadrivalent human papillomavirus vaccine trials: restoration of previously unpublished methodology(四価ヒトパピローマウイルスワクチンの主要な臨床試験におけるアジュバント含有対照薬: これまで未発表の試験方法を修正)」BMJ Evidence-Based Medicine Published Online First・2020年3月17日
[95] Lars Jørgensenら・前掲注90
[96] HPVワクチン薬害訴訟全国原告団ら「HPVワクチン(子宮頸がんワクチン)の審議に関する意見書」2020年1月17日
https://www.hpv-yakugai.net/app/download/7934106954/200117%E3%80%80opinion.pdf
[97] Elmar A.Jouraら「A 9-Valent HPV Vaccine against Infection and Intraepithelial Neoplasia in Women」New England Journal Medicine・2015年
[98] Manuel Martinez-Lavinら「Serious adverse events after HPV vaccination: a critical review of randomized trials and post-marketing case series(HPVワクチン接種後の重篤な有害事象:無作為試験および市販後症例集積研究[症例シリーズ]の批評的論評」Clinical Rheumatology・2017年7月20日
[99] Lars Jørgensenら・前掲注91
[100] 静岡県在住被害者の母のコメント
https://www.hpv-yakugai.net/app/download/8033489854/200925%20shizuoka-mother.pdf
[101] 日本医師会ら「HPVワクチン接種後に生じた症状に対する診療の手引き」2015年8月
[102] HPVワクチン薬害訴訟全国弁護団編「HPVワクチン薬害訴訟 原告の声 提訴から3年を経た今の思い」2019年7月19日
https://www.hpv-yakugai.net/app/download/7838648754/190719-02.pdf
[103] 厚生労働価額研究費補助金(新興・再興感染症及び予防接種政策推進研究事業)「予防接種の費用対効果の評価に関する研究」班(研究代表者:池田俊也)「予防接種の費用対効果の評価に関する研究ガイドライン」2017年3月・3頁