HPVワクチンのキャッチアップ接種に関する要請書

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地方自治体関係者各位

 

 

 

HPVワクチンのキャッチアップ接種に関する要請書

 

 

 

2022年6月27日

 

   HPVワクチン薬害訴訟全国弁護団

 共同代表 水口真寿美

 同 山西美明

 <連絡先> 東京都千代田区二番町12番地13 セブネスビル3階

 樫の木総合法律事務所内   電話03(6268)9550

 https://www.hpv-yakugai.net/

 

 厚生労働省は、過去にHPVワクチンの定期接種の対象者とされた女性で、接種をしなかった人に対し、「キャッチアップ接種」として、あらためて接種の機会を提供しようとしています。

 このキャッチアップ接種に関して、地方自治体のみなさまに、以下のとおり要請します。

 

<要請事項>

 

地方自治体が、キャッチアップ接種を勧奨することに反対します。

 仮に勧奨を実施する場合は、以下のことに留意して下さい。

 

1 情報提供に当たっては、年齢とともに有効性が低下すること及び副反応のリスクを十分に伝えて下さい(リーフレット「HPVワクチンのほんとうのこと」[1] を活用して下さい)。

 

2 対象年齢の方に予診票を一律に同封して郵送する方法による接種勧奨は行わないでください

 

   効果が限定的で副反応のリスクもあるHPVワクチンの接種よりも、子宮頸がんを減らす効果が科学的に証明されている検診を推進して下さい。

 

<要請の理由>

 

1 年齢が高くなるほど有効性は下がります

 

(1)HPVワクチンであるMSD社製ガーダシルとGSK社製サーバリックスは、ハイリスクのHPVのうち16型と18型の感染を予防するとされていますが、既に感染している人に対する有効性は示されていません。

   この点は、添付文書[2],[3]にも、「効能又は効果に関する注意」欄に、「接種時に感染が成立しているHPVの排除及び既に生じているHPV関連の病変の進行予防効果は期待できない。」と記載されているとおりです。

 

(2)HPVは、性交渉で感染するため、性交渉の体験があれば感染リスクが高くなることなどから、年齢が高くなるほど有効性が下がります。[4]

 

① 英国の研究では、接種時の年齢ごとに子宮頸がんの発生率の減少率の減少をみると、16-18歳接種群で34%14-16歳接種群で62%です(ただし、減少率は、がんになる人が少ない30歳までのデータだけしかなく、将来のことは不明です)。

 

② デンマークの研究では、20歳以上の女性にキャッチアップでワクチンを接種しても、がんは減らなかったというデータが出ています(統計的な有意差はありませんが、むしろ増えていました)。[5]

 

2 対象者への情報提供の方法は慎重に

 

年齢が高くなるほど有効性が下がる一方で、HPVワクチンには深刻な副反応のリスクがあります(例えば、副作用被害救済制度において、障害等の認定を受ける頻度は、他の定期接種ワクチンの15倍です[6]。)。そして、副反応症状に対する治療法も確立していません。

 

従って、対象者全体に一律に予診票を同封して個別通知を行うべきではありません。

 

また、そもそも、そのような方法で情報提供することが、法令や厚労省の通知で求められているわけではありません。

 

     厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会では、厚労省の担当部局からは次の考え方が示されていました。

 

「キャッチアップ接種の対象者については、予診票の個別送付を行うこと等による個別の勧奨を一律に求めることはせず、対象者が接種について検討・判断できるよう、ワクチンの有効性・安全性について丁寧な情報提供を実施していくこととしてはどうか。」[7]

 

     令和4年3月18日付の厚生労働省健康局健康課長通知[8]においても「キャッチアップ接種について、法第8条の規定による勧奨を行うこと。具体的には、予診票の個別送付を行うこと等により、接種を個別に勧奨することが考えられる。その場合には、「ヒトパピローマウイルス感染症に係る定期接種を進めるに当たっての相談支援体制・医療体制等の維持、確保について(令和 3年 12 28 日健健発 1228 第1号厚生労働省健康局健康課長通知)」でお示しした相談支援体制・医療体制等の整備状況や、各自治体におけるHPVワクチンの供給・接種体制等、地域の実情を踏まえて検討すること。」と記載されています。

 

このように、予診票の個別送付は考えられる一つの方法に過ぎません。

 

前記の令和 3年 12 月28 日通知では「相談支援体制・医療体制等が十分整備される前にヒトパピローマウイルス感染症に係る定期接種が性急に行われることがないように、市町村と必要な情報共有等を行うこと。」としています。

 

そして、このような国からの連絡は、地方自治法第245条の4第1項に規定する「技術的な助言」に留まるものであって、「勧告」ではありません。

 

これらの点の具体的な判断は各自治体に委ねられているのです。

 

3 検診を重視するべきです

 

  HPVワクチンの効果は限定的で、深刻な副反応があります。

 これに対し、検診が子宮頸がんを減らすことは科学的に証明されています。

 HPVワクチンを接種しても検診受診が必要です。自治体は、検診にこそ力を入れるべきです。

 

以上

 


[1] HPVワクチンのほんとうのこと https://hpv-yakugai-shien.net/2022/03/07/post-344/

[4] 令和3年11月15日第27回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会資料https://www.mhlw.go.jp/content/10601000/000854570.pdf

[5] Susanne K Kjaer, et al.  Real-World Effectiveness of Human Papillomavirus Vaccination Against Cervical Cancer, JNCI: Journal of the National Cancer Institute, Volume 113, Issue 10, October 2021, Pages 1329–1335, https://doi.org/10.1093/jnci/djab080

[6] 被害救済制度における障害・死亡の認定頻度の比較

https://www.hpv-yakugai.net/app/download/8095939254/202110%20compare--kyusai.pdf?t=1655515736

[7] 令和3年12月23日第28回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会資料

https://www.mhlw.go.jp/content/10601000/000871792.pdf

[8] 令和4年3月18日厚生労働省健康局健康課長通知

https://www.mhlw.go.jp/content/000915791.pdf

 


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