2022年11月4日、HPVワクチン薬害訴訟全国原告団・弁護団は、国が、MSD社が製造販売する9価HPVワクチン(子宮頸がんワクチン)であるシルガード9の定期接種を開始する方針を決定したことに対する抗議声明を発表しました。
是非、ご一読ください。
9価HPVワクチン(子宮頸がんワクチン)シルガード9の
定期接種化方針に対する抗議声明
2022(令和4)年11月4日
HPVワクチン薬害訴訟全国原告団
代 表 酒井 七海
HPVワクチン薬害訴訟全国弁護団
共同代表 水口真寿美
共同代表 山西 美明
<連絡先> 千代田区二番町12番地13 セブネスビル3階
樫の木総合法律事務所内
電話03(6268)9550
https://www.hpv-yakugai.net/
本年10月4日、厚生労働省は、MSD社が製造販売する9価HPVワクチン(子宮頸がんワクチン)であるシルガード9について、令和5年度早期から定期接種を開始するとの方針を決定しました。
しかし、昨年8月24日付意見書[1]で私たちが指摘したように、9価HPVワクチンは、多くの副反応被害を生み出してきた4価HPVワクチン(ガーダシル)と基本成分や設計を同じくするものであり、しかもL1タンパクやアジュバントの含有量は4価HPVワクチンの2倍であって、臨床試験における重篤な副反応の報告も約2倍となっています。
このような9価HPVワクチンを定期接種に組み込めば、副反応に苦しむ被害者が今以上に拡大することが強く懸念されます。
私たちは2価及び4価HPVワクチンの接種を積極的に推進した国と製薬会社の責任を追及する訴訟を2016年に提起し、全国各地の原告数は120名を超えています。また、米国においても、HPVワクチンに関するMSD社の責任を追及する訴訟が30件以上提起され、本年8月には、これらを統合して一元的に審理することが米国多地区訴訟司法委員会(JPML)によって決定されており、今後も多数の被害者の提訴が予定されています[2]。
このように国内外で訴訟が続く中、HPVワクチンによる重篤な副反応被害が免疫介在性の神経障害であることを示す多くの研究成果が蓄積されており、逐次それらの成果は裁判所にも証拠として提出されています[3]。
他方、新潟大学の研究グループは、国内の2価及び4価HPVワクチンの接種群と非接種群を対象として、高度扁平上皮内病変以上に進展した割合を年齢や性的パートナー数の影響を調整して比較したところ、対象者全体ではワクチンの有効性を統計的に示すことができなかったことを本年9月に報告しています[4]。この結果は、現に国内で進められた接種促進政策が子宮頸がんを予防する効果をもたらしていない可能性を示唆するものです。
このような事実に背を向けたまま、さらに9価HPVワクチンを定期接種化することは、極めて危険かつ非科学的な施策であり、断じて許容できません。
そもそも、本年4月に国が2価及び4価HPVワクチンの積極的勧奨を本格的に再開したこと自体、全く許されることではありません。
積極的勧奨の再開による接種者急増に伴い、私たちの下には、これまでに生じた被害者と同様に、頭痛、全身の疼痛、知覚過敏、脱力、不随意運動、歩行障害、激しい倦怠感、睡眠障害、重い月経障害、記憶障害、学習障害など、多様な症状が一人の患者に重層的にあらわれるという特徴をもった、新たな被害の情報が寄せられ始めています。都道府県が選定した「接種後に生じた症状の診療に係る協力医療機関」の新規受診者数も、やはり徐々に増え始めており[5]、新たな被害拡大が強く懸念される状況にあります。
国の副反応報告制度上で2価及び4価HPVワクチンについてのみ他と異なる集計方法が用いられた結果、重篤な副反応数が過少報告されてきたことも判明しましたが[6]、今なお国は被害の全体像の正確な情報すら提供していません。
重い症状に苦しみ続ける女性たちの一番の願いは、治療法が開発されることですが、国はこの被害が免疫介在性の神経障害であることを認めようとせず、根本的な治療法の開発を全く進めていません。
このような不公正な姿勢の下で、2価及び4価のみならず9価HPVワクチンの接種までも押し進めようとする国の方針に対し、私たちは強く抗議します。
以上
[1] 9価HPVワクチン(子宮頸がんワクチン)の定期接種化に反対する意見書
[2] https://www.prnewswire.com/news-releases/judicial-panel-consolidates-gardasil-vaccine-lawsuits-in-multidistrict-litigation-mdl-301600558.html
[3] 子宮頸がんワクチン接種後の副反応の病態に関する医学的知見
[4] Kudo R et al. T. Effectiveness of human papillomavirus vaccine against cervical precancer in Japan: Multivariate analyses adjusted for sexual activity. Cancer Sci. 2022 Sep;113(9):3211-3220.