新リーフレット全面修正の要望書を緊急提出しました

提出後記者会見の様子(中央右:酒井七海全国原告団代表、右端:水口真寿美全国弁護団共同代表)
提出後記者会見の様子(中央右:酒井七海全国原告団代表、右端:水口真寿美全国弁護団共同代表)

 2018年1月19日、全国弁護団はHPVワクチン新リーフレットの全面修正を求める緊急要望書を加藤勝信厚生労働大臣宛に提出しました。これは昨日、厚生労働省がHPVワクチンの積極勧奨を中止した2013年6月14日に作成されたHPVワクチンのリーフレットを著しく不適切な内容に改定したことに対し、その全面修正を求めたものです。

 提出後の記者会見には、酒井七海全国原告団代表(東京原告1番)、東京原告3番母子、東京原告53番母子が出席しました。

 会見では、新リーフレットが多様な副反応症状を伝えておらず、特に、記憶障害・学習障害については、医療従事者用のリーフレットだけに記載して、本人や保護者用には記載していない問題、救済制度での認定例のうち、障害と死亡の認定頻度を比較すると、HPVワクチンは、主な他のワクチンの平均値より約10倍高いことを伝えていない問題などを指摘しました。

HPVワクチンの危険性を指摘する水口真寿美弁護士
HPVワクチンの危険性を指摘する水口真寿美弁護士

 酒井七海さんは、以前よりは改善はされたものの、今でも教室を覚えるのに苦労しているといった自分の症状を紹介したうえで、全国原告団の代表として、厚生労働省が、接種希望者・保護者に接種を「検討してください」というなら、検討できるように副反応の症状をきちんと伝えてほしいと話しました。

副反応症状をきちんと記載してほしいと訴える酒井七海さん
副反応症状をきちんと記載してほしいと訴える酒井七海さん

 東京原告3番の女性は、簡単な引き算ができない、時計が読めないと言った症状で苦しんだこと、友人の顔が覚えられず、コミュニケーションが取れなくなって友達が離れていってしまったこと、毎日寝る前には「このまま友達や家族の顔をわすれて言ってしまうのではないか」と考えながら眠りについていることなどを話しました。また、原告3番の母は、親として本当に辛い、こういうことが起きるということを知ってほしいと話しました。

会見に臨む原告3番(左)と母
会見に臨む原告3番(左)と母

 東京原告53番の女性の母は、何度も会っている先生や友達の顔が覚えられない、自分の家に帰る道が分からない、見知らぬ男性を母と間違えて後をついて行ってしまったというような娘の深刻な症状を紹介したうえで、記憶障害や学習障害は時間が経ってから出てくることも知ってほしいと話しました。

 このような記憶障害・学習障害の症状は、全国の原告の80%以上にあたる102名が経験しており、70名が現在も改善せずに苦しんでいます。原告から集めた声をまとめた下記の「原告らの記憶障害・学習障害に関する主なエピソード」一覧表をご覧いただくと、その症状の深刻さをご理解いただけると思います。

 こうした症状に苦しむ全国各地の原告とその家族からは、新リーフレットに対し、

「私の娘の被害を、きちんと伝えてほしい」

「事実を事実として伝えることこそ、厚労省がすべきことではないですか」

といった悲痛な叫び声が上がっています。

 重篤な副反応症状に苦しむ被害者の気持ちを踏みにじるような新リーフレットは、直ちに全面修正がなされるべきです。

原告らの記憶障害・学習障害に関する主なエピソード

特徴的症状・エピソード
1 ・2016年4月ころから、記憶障害が出始めるが家族の事はまだ分かっていた。しかし4月22日の大きな発作の後はとうとう家族の事もわからなくなった。これまでも記憶障害はあったが、家族のことが判らなくなったのは初めてであった。現在は、記憶障害も学習障害もかなり回復していると感じているが、接種前の状態と比較すれば、そこまでは回復していない。今でも、普通の社会人としてアルバイト等をすることは容易ではないと感じている。
2 ・簡単な漢字が書けない、計算が遅くなる
・友人や祖母、母親もわからなくなる
・学校までの道や自宅もわからなくなる
3 ・家族との何気ない会話の内容を覚えていないことが度々ある。
・忘れ物,物忘れが多くなった
・漢字が思い浮かばなかったり,本の文字を追っていても内容が頭に入ってこなくなったりするようになった
・以前は分かっていた近所の人の顔や名前が一致しないこともある
4 ・友人の顔、自分のクラスの教室の場所がわからなくなる。
・漢字、ひらがな、数字も判別が困難になる。
5 ・学校の先生の言っていたことを覚えていない。友人から、修学旅行のときのことを言われても覚えていない。
・アルファベットを忘れる。
6 ・会話の途中から、内容が理解できなくなる。
・漢字が思い浮かばない。
・直前に読んでいた本の肝心なところを忘れる。母親への伝達事項を忘れる。
7 ・道に迷う,買ったばかりの物を忘れてまた買う,自分の名前が書けない
・前の日勉強したことが覚えられずにテストができない
・人の名前や顔が覚えられない
8 ・計算(特に暗算)ができなくなり、例えば「10個のお菓子から3個取ったら何個残るか。」が分からない。
・漢字もスマホで調べないと思い出せない。
・駅から家までの道順が分からず、母親が迎えに行く必要がある。
・靴の左右が分からない。
9 ・国語の試験の文章を読んでいる途中で、読んだ内容を覚えていられないため、何度も読み直さなければならない。
・文章を書き写すことが難しい。文章や言葉を覚えられず、1文字ずつ書き写している。
・計算をするのが遅くなった。数学の公式を忘れてしまい、覚え直そうとしたが、覚えられなくなってしまった。
10 ・テキスト、教科書が読めない(内容を把握できない)。
・読み慣れていたはずのピアノ譜面が突然読めなくなった。
・電子レンジ等の日常慣れ親しんでいた機器の使用方法が思い出せない。
11 ・先生や友達の顔、自分の名前、母の顔、自分の顔、自分の住所がわからなくなる
・本が読めない(どこを読んでいるのかわからなくなるため。)
・先生の説明が途中でわからなくなる
12 ・物の名前や人の名前が出てきにくくなった
・名字や親の名前が分からない、覚えられない。
・小銭の計算、スマホのひらがな変換がしにくい
13 ・「名前」「誕生日」という問いかけの意味分からなくなった
・1000から順次7を引くという簡単な計算ができない
14 ・意識喪失後、意識が戻った際に今までの全ての記憶を失っていた。単に記憶を失っただけではなく、言葉を全く話せない。トイレの仕方も分からない、ご飯の食べ方も分からないという知能レベル。現在は、少し回復し幼稚園児程度の知能か
15 ・通学路が分からず、帰ってこられない
・学校内の位置関係やクラスメートの顔が覚えられない
・過去の記憶がかなり失われている
16 ・小中学校の記憶がほとんどない,家の住所を忘れる,肉親の顔がわからない
・簡単な計算ができない,学んだことを忘れる,人の話が飲み込めない
・見当識障害様症状として,バナナを皮ごと食べてしまうなど。
17 ・指でお釣りの計算、九九の能力が少し落ちた、思い出せない
18 ・友人の名前が思い出せなくなったり,得意だった英語が記号にしか見えなくなったり,九九が出てこないなど。
・自分の名前が書けなくなったときもある。
19 ・計算能力の低下、以前まで読み書きできていた漢字を読み書きできなくなっている。
・外泊したことを覚えていない。
20 ・集中力、記憶力の低下
・祖母の顔をみて「誰?」と分からなくなる
21 ・直近のことが思い出せない
・簡単な計算を間違える
・考えがまとまらず言葉が出てこない
・行動するときは事前にメモをしてからでないと忘れてしまい、行動できない。
22 ・記憶をところどころ失っている。発作が酷かった時期など1か月くらい記憶が一切ない時期がある。
・文字が模様にしか見えず、黒板も読めず、また好きだった読書もできなくなったり、計算もできなかった時期があった。
・不随意運動の直後など、話をしたいことがあっても、口を動かすことができず(口の動かし方がわからなくなってしまう)話すことができない
23 ・突然、歩き方が分からなくなる、歩く時の足の上げ方が分からなくなる
24 ・ 友人の名前が出てこない、友人が話している内容がわからない
・今までできていた計算などができなくなる。テストでほぼゼロ点になったこともある。
・「頭が働いていない」と感じられ、学習問題は時間をかければ解けるというものではなく、全く解ける様子はない。
25 ・数分前のテレビの内容を忘れる
・本のストーリーが覚えられないので何度も前に戻って読み返す
・漢字が思い出せない,友人や先生の名前が思い出せない
26 ・物忘れがあり,昨日のことが思い出せない
・小学校で習うような簡単な計算ができなくなったり,コンビニでお金の出し方が分からなくなった
27 ・会話の際に単語が出てこなかったり、友人の顔や名前が思い出せない
・英単語や漢字が覚えられない
・電車の乗り換えをすることができない
28 ・友人と会う約束をしたのに忘れてすっぽかす,友人の名前や顔を思い出せない
・試験の日程や科目を間違えて試験を受けられない
29 ・記憶が飛ぶ
・外出中に記憶がなくなり、気がついたら家や友人宅にいる
30 ・忘れ物や失くし物は日常的にある
・ついさっき言ったことを覚えていない、物覚えが悪い、物をどこに置いたか忘れてしまう。
・友達の家に自転車で行った事を忘れて歩いて帰宅する。
31 ・毎日着ていたカーディガンを、「こんなの知らない」と言う。
・漢字が思い出せない。
32 ・意識消失発作後、自分の名前、生年月日、家族の名前も思い出せない。自分の部屋の物の位置、有名人の名前、友達の名前、スマートフォンの使い方が分からない、思い出そうとするとボーっとしてくる、など。
33 ・通学のための電車を乗り違える
・親しい知人友人の名前が分からなくなる
34 ・漢字を思い出せない。
・「8÷0.1」などの計算のやり方が思い出せない
35 ・教室や病室の場所がわからなくなった。
・人と話をしても相手の言うことが理解できないため会話が成立しない。
36 ・駅から自宅への帰り道が分からなくなり、GPSを使って帰宅。
・人の名前が出てこない
・さっき見た映画が思い出せない。
37 ・忘れっぽい、さっきやっていたことを忘れ、また同じ事を始める。インコの籠の掃除をやっているが、終わったばかりでまた掃除をはじめた。
・新しいことが頭に入ってこない。
38 ・本を読んでいるとき、内容をすぐに忘れるので、数行前に戻って何度も戻って読み直す。登場人物の名前が覚えられない。
・友人の顔を忘れることがある。

※項目番号は原告番号ではなく、重篤な認知機能障害に苦しむ原告38名の症状をランダムに並べ直してあります。