HPVワクチン新リーフレットの全面修正を求める緊急要望書

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HPVワクチン新リーフレットの全面修正を求める緊急要望書
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平成30年1月19日

厚生労働大臣 加藤 勝信 殿

HPVワクチン薬害訴訟全国弁護団
共同代表 水 口 真寿美
同 山 西 美 明
<連絡先>
〒102-0084 東京都千代田区二番町12番地13
セブネスビル3階
電話03(6268)9550
https://www.hpv-yakugai.net/

HPVワクチン新リーフレットの全面修正を求める緊急要望書

 厚生労働省は、本年1月18日、HPVワクチンに関するリーフレットを改定し、「医療従事者の方へ」、「HPVワクチン接種を検討しているお子様と保護者の方へ」、「HPVワクチンを受けるお子様と保護者の方へ」と題する3種類のリーフレットを公表しました(http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou28/)。
 しかし、改定されたリーフレットは、いずれについても、重大な欠陥があり、国民や医療従事者に対する情報提供として極めて不適切です。直ちに修正するよう求めます。
 問題点は多々ありますが、主要な点を列挙すれば以下のとおりです。

1 多様な副反応症状が適切に記載されていない

(1)HPVワクチンの多様な副反応症状が記載されていない

  リーフレットの最も重要な役割は、医療従事者や国民に対し、HPVワクチン接種後に報告されている副反応が疑われる症状について、分かりやすく、具体的に情報提供をすることです。
 HPVワクチンの副反応症状としては以下のような多様な症状が報告されています。しかも、これらが時の経過とともに変化したり、重層化したりする特徴があります。

 

①運動に関する障害

不随意運動、脱力、歩行失調、姿勢保持困難、握力低下、けいれんなど

 

②感覚に関する障害

ハンマーで殴られたような激しい頭痛、関節痛、筋肉痛、腹痛、全身疼痛、視覚
障害、光過敏・音過敏・嗅覚過敏、四肢のしびれなど

 

③自律神経や内分泌に関する障害

発熱、月経障害、過呼吸、睡眠障害、むずむず脚症候群、立ち眩み、めまい、体
温調節困難、手汗などの発汗過多、手足の冷感、吐き気・嘔吐、下痢、便秘、排
尿障害など

 

④認知機能や感情・精神機能に関する障害

学習障害、記憶障害、見当識障害、相貌認知障害、集中力の低下、気力の低下、著しい倦怠感・疲労感、不安感、悪夢を見る、イライラしたり感情的になるなど

 

 しかし、いずれのリーフレットにおいても、これらの一部しか紹介されておらず、説明が不十分であるうえ、大変見にくく、わかりにくいものとなっています。
 特に、本人・保護者向けのリーフレットにおける症状と説明は、(2)で述べる学習障害・記憶障害についての記載がないことをはじめ、医療従事者向けのリーフレットに記載されたものよりも少なく、分かりにくいものとなっています。医療従事者に伝える必要があると判断して記載した副反応症状を、本人・保護者向けのリーフレットに記載せず差を設けることは、国による予防接種に関する情報提供のあり方として著しく不適切です。

 

(2)学習障害・記憶障害が記載されていない

ア  学習障害・記憶障害は、本人や保護者向けの2種類のリーフレットには全く記載されていません。
 学習障害・記憶障害は、全国124名の原告のうち102名が経験をし、このうち70名が現在も苦しんでいる日常生活に重大な支障をもたらす症状のひとつです。医薬品医療機器総合機構(PMDA)の医薬品副作用被害救済制度でも昨年11月までに「接種との因果関係が否定できない」として医療費や医療手当を給付された246件中、54%の134件で認知機能低下が認定されています(本年1月18日毎日新聞朝刊)。日本医師会と日本医学会が2015年にまとめた「診療の手引き」においても、問診の留意点として掲げられている症状です。
 学習障害・記憶障害について、本人や保護者向けのリーフレットに記載しないことは不当という他はありません。

 

イ  医療従事者向けのリーフレットでは上記障害に関する記載はあるものの、「(3)疼痛又は運動障害の報告について」というタイトルの項に小さく記載されているのみで、記載方法が不適切です。
 そもそも、HPVワクチンの副反応は疼痛と運動障害だけではないのですから、この項目のタイトルから見直すべきです。

 

2 他のワクチンと比較して危険性が高いことが記載されていない

 リーフレットでは、HPVワクチンの副反応疑い報告数や救済制度での認定数について触れられていますが、他のワクチンとの比較が全く書かれていません。
 まず、100万回接種当たりの重篤副反応報告は、HPVワクチンは他の定期接種ワクチンの平均と比較して6.5倍です(別表1)。
 さらに、救済制度での認定例のうち、障害(障害年金・障害児養育年金の支給対象)と死亡という深刻なものに絞り込んで認定頻度を比較すると、HPVワクチンは、主な他のワクチンの平均値より10倍近くも高くなっています。すなわち、HPVワクチンの発売開始から現在までにPMDAの医薬品副作用被害救済制度における障害・死亡の認定頻度は、被接種者100万人あたり10.88人に達していますが、主な他のワクチンの平成17年から25年までの予防接種健康被害救済制度における障害・死亡の認定頻度の平均値は100万人あたり1.23人です(別表2)。
 これらは、他のワクチンと比較してHPVワクチンの副反応が極めて危険であることを示すものであり、これからHPVワクチンの接種を検討する者にとって極めて重要な情報ですが、リーフレットには全く書かれていません。

 

3 接種後1ヶ月以上経過しても副反応が発症しうることの説明がない

 医療従事者向けのリーフレットには、接種から1ヶ月以上経過してから発症した症状は因果関係を疑う根拠に乏しいと記載されています。
しかし、これは従来のワクチンの副反応がおおむね接種から1ヶ月程度の間に発生してきたからHPVワクチンも同様であろうという科学的根拠の乏しい見解であり、HPVワクチン接種後の副反応には当てはまりません。
 HPVワクチンでは、被害者が接種から1ヶ月以上たってから重篤な副反応を発症する場合があり、このことは多くの研究論文においても指摘されています。
 このような不適切な記載がなされることによって、本来HPVワクチンの副反応が疑われる症例について適切な診断や副反応疑い報告がなされなかったり、従来もみられた副反応症状を訴える者を詐病扱いする医師が増えたりする可能性が懸念されます。

 

4 有効性の限界についての記載が不十分である

 HPVワクチンが子宮頸がんを予防する効果は証明されていません。HPVワクチンの有効性についてまず説明されるべき科学的事実はこの点です。
 しかし、本人及び保護者向けのリーフレットにおいては、この科学的な事実よりも「ワクチンを接種してウイルスの感染を防ぐことで子宮頸がんを予防できると考えられている」ということの方が強調され、ウイルスの感染が防げるということと子宮頸がんを予防できるということが別のことであるという基礎的な知識のない本人や保護者に対し、過度の期待を抱かせる内容となっています。
 また、臨床試験で前がん病変を予防する効果が確認されている期間が最長9年であるなどの有効性の限界についても記載されていません。
 有効性の記載を全体として改めるべきです。

 

5 不適切な効果推計が記載されている

 いずれのリーフレットにも、HPVワクチンによる子宮頸がん予防効果に関する推計として、10万人あたり859~595人が子宮頸がんになることを回避でき、10万人あたり209~144人が子宮頸がんによる死亡を回避できると記載されています。
 この推計は、①前がん病変(CIN2)の減少効果は癌そのものの予防効果と同視できる、②ワクチンの接種効果が生涯続く、という2つの非常に問題のある仮定を重ねた上でのものです。感染したHPV(ヒトパピローマウイルス)の9割は2年以内に消失し、CIN1に進んでも、若い女性では、その9割が3年で消失します。残る1割がCIN2 に進展しても、その後10年以内にがんに至る率は1.2%です。そのようなCIN2 の減少効果を子宮頸がんの減少と同視し、臨床試験では最長9年しか効果の持続が証明されていないのに、その効果が生涯続くという仮定で計算をしているのです。
 このような実証性の乏しい「期待」をリーフレットに記載することは有害です。

 

6 不適切な「祖父江班調査」の結果がそのまま引用されている

 医療従事者向けのリーフレットには「HPVワクチン接種歴のない方においても、HPVワクチン接種後に報告されている症状と同様の『多様な症状』を有する方が一定数存在したこと、が明らかとなっています」と記載されています。
 これは「祖父江班調査」(厚生労働科学研究「青少年における『疼痛又は運動障害を中心とする多様な症状』の受療状況に関する全国疫学調査」研究代表者:祖父江友孝)に基づくものですが、この調査で非接種者に認められたとされているのは、HPVワクチンの副反応と「同様の」症状などではありません。
 祖父江班調査の問題については、「全国疫学調査」に対する弁護団コメント(詳細)」(https://www.hpv-yakugai.net/2016/12/30/ekigaku-comment/)のとおりです。
 この調査については、研究班代表の祖父江氏自身が、この調査には多数のバイアスがあるとし、接種歴がないのに「多様な症状」を有するとされた患者の症状と、HPV ワクチン接種後に認められた副反応症状との同質性は、この調査では分からない旨を合同部会(2017年4月10日開催)で説明しています。また、この調査は、「結論」として、「本調査によって、HPVワクチン接種と接種後に生じた症状との因果関係は言及できない」とも述べています。
 そのような調査結果をリーフレットにあえて記載することは不適切であり、HPVワクチンの副反応についての誤解を助長することは明らかです。この記載は削除されるべきです。

 

7 HPVワクチンの副反応を「機能性身体症状」とすることの誤り

 以上のリーフレットの問題は、そもそも厚生労働省の厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会、薬事・食品衛生審議会医薬品等安全対策部会安全対策調査会の合同部会によるHPVワクチンの副反応に対する検討が不適切かつ不十分であることに起因しています。
 合同部会は、日本においてHPVワクチン接種後の副反応症状を訴える患者を実際に診療した研究者らの多数の研究成果(別紙文献一覧1~10)を検討せず、非科学的な
消去法によって導いた、HPVワクチンの副反応をワクチン接種の痛みと痛みに対する
恐怖心が引き起こす機能性身体症状(「心身の反応」)とする見解を採用しており、こ
こに問題の本質があります。合同部会の検討の問題点については、既に提出した意見書
のとおりです(https://www.hpv-yakugai.net/2017/12/21/statement/)。

 以上のとおりですので、HPVワクチンに関する新リーフレットはすみやかに全面修正
されるべきです。

以 上

別表1

別表2

文献一覧

1 ヒト・パピローマウイルス・ワクチン関連神経免疫異常症候群の臨床的総括と病態の考察 (日本医事新報No.4758 46-53 頁) 2015 年7 月4 日 横田俊平ほか
2 ヒトパピローマウイルスワクチン接種後の中枢神経障害を中心とする多彩な病態をどのように把握するか:わが国と諸外国の調査成績の検討 (神経内科85 巻5 号512-519頁)2016 年11 月 西岡久寿樹
3 ヒトパピローマウイルスワクチン関連神経免疫異常症候群:小児科の視点から (神経内科85 巻5 号520-527 頁)2016 年11 月 横田俊平ほか
4 Immunological studies of cerebrospinal fluid from patients with CNS symptoms after human papillomavirus vaccination (Journal of Neuroimmunology 298 巻71-78 頁)2016 年7 月 高橋幸利ほか
5 ヒトパピローマウイルスワクチン接種後の神経障害:自己免疫性脳症の範疇から(神経内科85 巻5 号547-554 頁)2016 年11 月 荒田仁・髙嶋博
6 子宮頸がんワクチン関連の神経症候とその病態(神経治療学33 巻1 号32 頁)2016 年5 月20 日 池田修一
7 ヒトパピローマウイルスワクチン接種後の神経障害:他覚的検査所見について(神経内科85 巻5 号536-546 頁)2016 年11 月 平井利明ほか
8 Adverse effects of human papilloma virus vaccination on central nervous system Neuro-endocrinological disorders of hypothalamo-pituitary axis(自律神経53 巻1 号49 頁)2016 年3 月 平井利明ほか
9 Peripheral Sympathetic Nerve Dysfunction in Adolescent Japanese Girls Following Immunization with the Human Papillomavirus Vaccine(Internal Medicine 53 巻19 号2185-2200 頁)2014 年10 月 木下朋実ほか
10 Murine hypothalamic destruction with vascular cell apoptosis subsequent to combined
administration of human papilloma virus vaccine and pertussis toxin (Scientific Reports 6, Article number: 36943) 2016 年11 月 荒谷聡子ほか