12名の新たな原告~HPVワクチン薬害東京訴訟・大阪訴訟第3次提訴

東京地裁に提訴した宮森未琴さん(東京原告59番)
東京地裁に提訴した宮森未琴さん(東京原告59番)

 本日、HPVワクチンの接種で被害を受けた女性12名が、国とグラクソ・スミスクライン社、MSD社を被告として、東京地方裁判所と大阪地方裁判所で提訴しました。

 2016年7月27日に全国4地裁に一斉提訴しましたが、本日の提訴が東京訴訟・大阪訴訟ともに第3次提訴であり、全国の原告数は132名となりました。

 また本日の提訴で、初めて東北地方在住の被害者が原告に加わりました。

梅雨の晴れ間に恵まれた東京地裁
梅雨の晴れ間に恵まれた東京地裁
東京地裁に入廷する新規原告と東京原告団・東京弁護団
東京地裁に入廷する新規原告と東京原告団・東京弁護団

 原告総数61人となった東京の提訴後会見では、まず、全国弁護団共同代表の水口真寿美弁護士から、東京・大阪3次提訴にあたっての全国原告団・全国弁護団の声明を発表し、この訴訟を通じた被告らの法的責任の明確化と治療法の開発等を含む真の被害回復に向けた、社会からの支援を呼びかけました。

弁護士会館内で行われた東京提訴後会見
弁護士会館内で行われた東京提訴後会見

 続いて本日の提訴で東京原告59番となった宮森未琴さんが、自らが体験してきた被害の実情を説明しました。

会見で被害の実情を語る宮森さん
会見で被害の実情を語る宮森さん

 宮森さんはサーバリックスの2回目の接種後から足のしびれや倦怠感が続くようになり、これまでになかった喘息症状も出現して何度も入院を余儀なくされました。また、頭痛や腹痛、全身痛も悪化し、シャワーが体にあたるだけでも、針などがチクチクと降りかかってくるような痛みを感じるようになりました。

 高校には何とか進学しましたが、体調不良から授業についていくことが難しく、看護師になるという夢はあきらめざるをえず、大好きだった吹奏楽をも続けることができませんでした。

 高校は学校の理解の下で保健室登校といった努力を重ねて卒業できましたが、進学は諦めざるを得ず、就職を選択しました。しかしめまいや吐き気といった症状は悪化して仕事は続けることは難しくなり、現在19歳となった宮森さんは、フルタイムで働くことができないためアルバイトをして生活しています。

 今日の会見で、宮森さんは、将来に対しては不安しかないけれども、さらに自分たちのように辛い思いをする人が増え続けないように、声を上げられない仲間のためにも裁判に参加しようと決意したと話ました。

「私の中学、高校時代を返して下さい。私達被害者は、お金じゃ買えない大切な物を、幾度となく、なくしてきてるんです」

 そう語った宮森さんは、自分たちの症状を副反応と認めて治療法が研究され、より安全な子宮頸がんワクチンを開発されることが今の自分の望みであると記者に伝えて、会見での発言を終えました。

 会見には、同じく今回提訴した東京原告56番さんの母も出席し、娘の被害の実情を説明しました。サーバリックスを3回接種した後に生理不順や多汗症、めまいといった症状に苦しむようになった56番さんは、大学で栄養学を学ぶという夢を諦めざるを得ませんでした。20歳となった今も、一日中寝たきりの日々が続いています。56番さんには高次脳機能障害も出現しており、人の話を聞いていても声が音として聞こえてくるだけで、言葉の意味が理解できず、まるで外国にいるように感じることがあると、母に話すそうです。

「親である私達家族は、ただひたすら元の体に戻して欲しいことだけを望んでいます」

 56番さんの母は、このように述べて被害者への支援を呼びかけました。

 

 東北地方在住の被害者として初めて提訴した原告62番さんは、日常生活のほぼすべてに介助が必要なほど重い症状を抱えています。それでも原告62番さんは、一言だけでも自分で被害を訴えたいと願い、今日の提訴行動に参加するために上京を予定していましたが、体調がさらに悪化したため、参加することができませんでした。

 会見では、62番さんの母から託されたコメントを担当弁護士が朗読しましたが、その中では62番さんが「被害をなかったことにされたくない、自分としても裁判で証明していかないといけない」と言って裁判に加わることを決意したことが紹介されました。

 本日は大阪訴訟でも新たに3名の原告が加わり、大阪訴訟の原告総数は25名となりました。 

大阪地裁に入廷する大阪原告団・大阪弁護団
大阪地裁に入廷する大阪原告団・大阪弁護団
提訴後の会見に臨む児玉三紀子大阪原告団代表(大阪原告18番児玉望美さんの母)
提訴後の会見に臨む児玉三紀子大阪原告団代表(大阪原告18番児玉望美さんの母)

 既に提訴している大阪訴訟原告やその家族も一緒となって大阪地裁に入廷して訴状を提出し、記者会見を行いました。

 大阪弁護団からは、第3次提訴原告本人のコメントを紹介するとともに、第1次提訴から3年を経て、今なお被害者の救済が置き去りにされている現状を訴えました。

会見に出席したすでに訴訟中の大阪原告ら
会見に出席したすでに訴訟中の大阪原告ら

 また記者会見には、児玉三紀子大阪原告団代表(大阪原告18番児玉望美さんの母)とともに、第1次提訴の原告2番と第2次提訴の原告19番も参加して、現在も抱えている辛い症状について
 「いつも体調が悪いから、風邪を引いても気づくこともできない」
 「今も腰が、背中が痛い。突然耐えられない腹痛も来る」

と説明しました。

また、これまでの被告企業や被告国の応訴態度については、
 「提訴して3年、被告企業は、国はずっと同じ主張を繰り返している」
 「早く治療法を見つけてほしい。少しでも良いから寄り添ってほしい」
と訴えました。

 本日の東京・大阪3次提訴にあわせて公表された全国の原告の声を集めた文集は、東京と大阪の会見で配布しましたが、弁護団では、名古屋地裁・福岡地裁の各記者クラブにも配布し、被害は今なお続いていることを記者に説明しました。

名古屋地裁司法記者クラブで文集を紹介する高岡伸匡名古屋弁護団事務局長(右)
名古屋地裁司法記者クラブで文集を紹介する高岡伸匡名古屋弁護団事務局長(右)

 あらたな原告を迎えた全国原告団と全国弁護団は、HPVワクチン薬害問題の早期解決に向けて、団結して努力を続けていきます。今後ともご支援をよろしくお願いします。